3月11日になりました。東北のことを想う日ですが、今年は新型コロナウイルスによって、政府追悼式をはじめ多くの催しが中止になっています。残念ですが、今日の14時46分には、犠牲になった皆様のために、皆さんのいるその場で想いを馳せて頂ければと思います。
この日だからこそあえて、小泉環境大臣と議論していた、福島の除去土壌最終処分の問題について、触れておきたいと思います。
まずは、今日、さきほど小泉大臣が発信した文章を読んで下さい。
東日本大震災から9年になります。
改めて、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りすると共に、9年間復興に取り組んでこられた東北の皆さんをはじめとする関係者の皆さんに心からの敬意を表します。本来であれば、今日は政府による「東日本大震災追悼式」に国務大臣として参列の予定でしたが、追悼式が新型コロナウイルス感染症拡大防止のために取りやめとなりました。追悼式の中止は大変残念なことですが、現在の状況を考え、政府が判断したことについてご理解頂ければと思います。
先週から、福島の再生土を使用し、鉢植えの観葉植物という形で環境省の私の部屋(大臣室)に置き始めました。これは小さな一歩かもしれませんが、福島県外ではじめて再生土の「実証事業」を始めたことになります。この取組みを開始するに至った想いや背景をお話したいと思います。
『東日本大震災から9年を迎えて。』(小泉進次郎オフィシャルblog)
福島の再生土の想い・背景について、詳しくは次のblogの原文を見て頂ければと思います。
今回の大臣のメッセージがなぜ行われたのか。またこれから国民の理解を得ていくために政府がどのような姿勢で望むべきかを、コメントしておきたいと思います。
1 除染土壌の再生利用が、なぜ福島の復興に不可欠なのか
フレコンバッグに包まれた除染土が福島県内の各地にあることで、「福島の復興はまだまだ」「福島は危ない」といったイメージがつきまとっています。これらは2045年までに県外処分する計画ですが、この見通しが立たない限り、福島の復興が終わることはありません。
この県外処分を進めていく上で、東京ドーム11杯分ある除染土壌を、安全な形で再利用することが必要です。しかし政府への根強い不信感があり、なかなか進まない現実があります。
2. 政府は、科学的根拠(エビデンス)に基づいた説明を行えるのか
最近では新型コロナへの対応で、全国の小中高一斉休校が政府から要請されましたが、科学的根拠が曖昧であることが批判されました。本来政府が方針を決定するには、科学的なファクトの積み重ねの上での政治的判断が求められます。
今回の再生土壌は全国の公共工事に使われる計画がありますが、はたして十分安全と言えるのかを、国は説明する責任があります。
正確・緻密な検証は、飯舘村等で行われている実証実験の結果を待つ必要がありますが、小泉大臣はたとえ鉢植えにしても周辺環境に影響を及ぼさないことを象徴的に示しました(実際は、盛土など人が触れることのない材料にのみ利用されます)。環境省は、こうした再生利用が安全なのか、これから繰り返し繰り返し説明していく必要があります。
3. 政府は、徹底した情報公開を続けられるのか
森友、加計、桜といった問題によって、政府の情報公開についての信頼は大きく下がっています。しかし、この福島の再生土が全国で使われるためには、隠蔽を疑われる事態は絶対に避ける必要があります。
例えば、2011年の震災で、震災がれきが処理できる量の19年分(宮城県のケース)が発生した時に、全国で広域処理をすることに同様に心配の声が上がりました。その際に環境省はネットを通じた情報公開を行い、多くの自治体に理解して頂いたことで、がれき処理が進みました。
福島の除去土壌についても、全国のどこで再生利用が行われるのか、また実際に安全なのかを、公開し続ける必要があります。
民間からも小泉大臣に呼応を
福島県の皆さんは、汚染水が福島県沖に流されることで、福島だけが風評被害に苦しめられることを懸念しています。また、この除染土の最終処理問題も、結局は福島県内だけで処理されるのでは、と疑問を持たれています。
そもそも、関東に電力を供給するために、福島の原発は立地していました。しかし、多くの日本人にとって福島の復興は、遠い出来事になっています。福島の復興のために、日本人全体が福島の苦労を分かち合う姿勢が必要ではないでしょうか。3月11日だけ形だけ東北のことを考えるのではなく、もう少し自分事で福島の考えるべきではないでしょうか。
福島の除染土の最終処分は、環境省が信頼をもって舵取りすることが大事です。小泉大臣には環境大臣の任期に関わらず、最終処理がどうあるべきか、発信を続けてほしいと考えます。
そして民間側こそ、彼の呼びかけに呼応していく必要があります。
編集部より:この記事は、一般社団法人RCF 代表理事、藤沢烈氏の公式note 2020年3月11日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は藤沢氏のnoteをご覧ください。