「福島原発事故」と「新型コロナウイルス問題」の共通点

田原 総一朗

田原総一朗です。

あれから9度目の3月11日がやってきた。

2月28日の「朝まで生テレビ!」は、「激論!福島の現状と原発再稼働」をテーマに徹底的に議論した。

事故が起きた福島第1原発3号機(東電撮影、内閣府HPより)

震災から9年経ったというのに解決していない問題は山積みだ。
近い将来、保管場所がなくなるとされる冷却水問題。福島第一原発の廃炉、また、使用済み燃料の処理はどうするのか、という問題もある。

そして、現在国内で稼働している原発は7基。
これは日本の総エネルギーの3%に過ぎず、81%は火力発電に頼っている。
CO2削減の方針とは逆行している。

昨年12月に開催された国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)では、当時16歳の環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんが富裕国の気候変動対策を非難するスピーチをした。このCOP25で日本は、国際的な環境NGO「CAN」から温暖化対策に消極的な国に贈られる、不名誉な「化石賞」をもらってしまった。

政府は2030年までに、原子力発電を20~22%まで増やすというが、そのためには原発の新設が必要な計算となる。
福島の問題が解決していない、今の日本で原発建設が許されるなどと、政府は本気で思っているのだろうか。

事故から9年経った今も、まだこういう議論しなければならないことに僕は愕然としている。

そしていま世界の大問題となっている、新型コロナウイルス感染症の問題に対する日本の対策を見ていると、福島第一原発事故とダブって見えるのだ。

たとえば、原発事故が起きるまで、福島では避難訓練を一切やっていなかった。
なぜか。
東電は原発事故は「起きないもの」としてきたからだ。

そして、新型コロナウイルス問題が起きたとき、政府の対応は遅れに遅れた。
これもまた、「起きないもの」としていたのではないか。

日本にはそもそも、安全というものに対する基本政策がないのではないかと思う。
さらに基本方針を話し合う会議を、閣僚が3人も休んでいたというのだから、あきれた。

「朝まで生テレビ!」に出ていただいた環境学者の飯田哲也さんが、宗教学者の島薗進さんのツイートを引用した。
両方とも、問題点は、政府が、「調べない、知らせない、助けない」ことだと。

事故直後、放射線を測らない、また、測っても公開しなかった。
そして飯田さんは、こうも言った。
「官僚と専門家がきちんと現場を見ていない」。
僕もまったく同感である。

僕は福島第一原発事故が、起きた当時の社長に取材している。
東電は、1200年前に大地震が起き、福島第一原発の建つ場所に15mの津波が来たという史実を2008年には知っていたのだ。
「早く堤防をつくらなくては」と考えながら、莫大な費用に二の足を踏んでいるうちに、あの震災が起きたのだ。
結果的に、堤防の費用どころではない莫大な損失を被った。

そして金銭だけではない、大きな負の遺産を背負ってしまったのだ。

起こってしまった過去は変えられない。
しかし僕たちは、過去から学ぶことはできるはずである。

大地震、台風、水害と、災害は必ずやってくる。
現場に足を運び、今一度、「危機管理」を考え直すべきではないか。

3月11日を迎え、そして今、新型コロナウイルス問題の対策を見ていると、そう考えざるを得ない。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2020年3月12日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。