こちらで紹介した通り新型コロナウイルス感染拡大を受け全米50州で非常事態宣言が発動され、人と人との距離を広げる“ソーシャル・ディスタンシング(social distancing)=社会的距離戦略or 社会的隔離”が根付く米国。店内での飲食禁止や娯楽施設の閉鎖といった措置に加え、ニュージャージー州では夜間の外出自粛を要請したほか、カリフォルニア州内の地方政府は“シェルター・イン・プレイス(shelter-in-place)=屋内退避勧告”を発表しました。詳細は、以下の通り。
ニュージャージー州の場合
- 3月16日に決定、同日の午後8時から開始、期間は設定せず(人口約900万人)
- 午後8時から午前5時は不必要な外出自粛を指示
- 劇場やジムなど全ての娯楽施設を閉鎖
- レストランなど飲食店の営業は、テイクアウトとデリバリーのみ
- 50人以上のイベント開催、集会を禁止
カリフォルニア州サンフランシスコなど6つの郡の場合
- 3月16日に決定、17日から開始、4月7日までの3週間
- サンフランシスコを始めサンタクララ、サンマテオ、マリン、コントラコスタ、アラメダなど6郡で施行(人口約670万人)
- 不必要な外出自粛を指示(徒歩、自転車、スクーター、自動車、公共交通機関など全て含む)
- 不必要なイベント開催、集会の禁止
- 劇場やジムなど全ての娯楽施設を閉鎖
- 在宅勤務の導入、ただし病院、薬局、法務、金融機関、スーパーなど食料品店、デイケアセンター、レストランなど飲食店、金物店やホームセンター、一部コインランドリーなど出勤が必要な労働者を除く
- 公共交通機関や空港、タクシーなどはサービス継続、ただし利用は”必要不可欠な外出“に限定
- 外出時は他者と6フィート(約183㎝)の距離を確保
- レストランなど飲食店の営業は、テイクアウトとデリバリーのみ、ウーバーイートなどリ宅配サービスも営業可能
- ホームレスは対象外、ただし施設への移動を推奨
屋内退避勧告については、NY市も検討中。実施が広がれば個人消費への落ち込みは確実で、全く予想がつかない展開となってしまいました。
ところで、気になるのが屋内退避の線引きですよね?”必要不可欠“な外出は認められているわけですが、果たして?答えは、以下の通りです。
必要不可欠な外出
- 食料品や薬品など生活必需品の買い出し、銀行など金融機関の訪問、通院、通院の介護
- 在宅勤務できない業務従事者
- 犬の散歩、ランニング、登山など健康維持のための外出
必要不可欠ではない外出
- ヘアサロンやネイルサロンの訪問
- ジムやフィットネスセンターの利用
- 図書館、美術館、映画館などの利用
カリフォルニア州サンフランシスコの場合、規定によれば一連の措置の違反者には罰金あるいは軽犯罪での懲役、最悪の場合は両方科されてしまいます。とはいえ、誰が違反者か判断するのは容易ではなく、警察は規則遵守を励行していく方針です。ニュージャージー州では、対象者に警告を出すようですが、2回以上となれば治安当局が介入する示唆を与えています。とはいえ、SNS上を中心に行動を自粛しない人々に”ソーシャル・シェイム(social shame)”=社会的罪悪感”を与える自警団のような方々が増えてますから、警察が出る幕はなかったり?
暗い話ばかりでは、ありません。非常事態に合わせこんなサービスが提供されつつあります。
日本でも伝えられる通り、新型コロナウイルスの重篤患者は高齢者や疾患を持つ方々に多いですよね。そこで、米国大手スーパーマーケットなどは、そろって対策に打って出ました。“Elderly Hours”や”Safe Hours”などと銘打ち、高齢者など健康に不安を持つ方々が安心して買い物ができるよう、通常の営業時間を前倒しなどを通じ彼らのための時間を設定し始めています。
例えば、スーパーマーケット“セーフウェイ”など約2,200店を傘下に置くアルバートソンズは、火曜と木曜に営業開始を2時間前倒しし、高齢者や妊婦、疾患を持つ方々の利用を推進します。アマゾン傘下のホールフーズも、全米やカナダ、英国での店舗にて60歳以上の高齢者向けに、営業開始の1時間前倒しを決定しました。百貨店ターゲットは営業時間を午後9時までとし、水曜日の営業開始から1時間を高齢者や健康に不安を持つ方々のために充てます。
ウイルスという見えない敵と戦うには、前代未聞の方策に打って出るしかない現状を映し出しています。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年3月18日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。