今年(2020年)の初め、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で新型コロナウイルス患者が大量に発生したとき、世界のメディアは日本政府の無様な対応を嘲笑した。しかし今、日本を笑う人はいない。
日本の新型コロナによる100万人あたり死亡率は0.5人。200人以上のイタリアやスペインだけでなく、感染が始まったばかりのアメリカの15人もはるかに下回り、大国としては圧倒的な世界一である。今では「日本の謎」として世界がその秘密を知りたがるようになったが、日本人にもその答はまだわからない。
新型コロナは昨年末から日本に上陸していた?
第1の説明は、これから感染爆発が起こって、他の国と同じようになるということだ。今までは現場の医師の懸命な治療やクラスター追跡によって感染の拡大を阻止してきたが、その限界が来ると、大規模な感染が起こって医療が崩壊する可能性もある。
これが政府の公式の立場であり、そういうリスクを警戒することは必要である。しかし4月1日の専門家会議も認めたように、大都市では局地的に感染が拡大しているが、今のところ欧米のような感染爆発は見られない。
第2の可能な答は、日本人の多くがすでに免疫をもっているということだ。日本の致死率(死者/感染者)は2.3%と高いが、これは分母のPCR検査数が少ないからだ。感染症の専門家によると、感染症で最初の死者が出るのは、感染が始まってから1カ月以上後だという。
新型コロナの場合、ダイヤモンド・プリンセス以外の国内で最初の死者が出たのは2月中旬だから、2週間の潜伏期間を考えると、昨年末までには新型コロナウイルスが国内に入っていた可能性がある。
中国と同じ感染力(基本再生産数)を想定すると、日本ではコロナの上陸から3カ月以上たっているので、すでに国民の半分以上がコロナに感染し、抗体をもっていることになる。それが検査で発見されなかったのは、大部分が軽症で「普通の風邪」と診断されたからではないか。
今シーズンは世界的にインフルエンザが大流行し、日本でも昨年末まで史上最高のペース(毎週9万人)だった患者が、年明けには5万人以下に減り、今は毎週2万人である。これは新型コロナに感染した人が、インフルエンザにかからなかったためかもしれない。
この仮説には医学的根拠はないが、検証するのは簡単である。イギリス政府がやるように新型コロナの抗体検査キットを無作為に抽出した人に配布して、サンプル調査をすればいいのだ。これは1000人の血清検査で十分なので、数百万円あればできる。