台湾旅行で在宅検疫破りの韓国籍夫婦、帰国寸前の空港で御用

新型コロナ肺炎による志村けんさんの突然の訃報は、ともすると緩みがちな我々のこの感染症に対する警戒心を、政治家や専門家のどんな言葉よりも引き締めたのではなかろうか。この天才のコントには言葉の壁もないようで、人気があった台湾からも蔡英文総統の日本語のお悔やみツイートがあった。

その台湾は、この厄介なコロナウイルスを目下のところ上手く抑え込んでいて、4月5日時点で確認されている感染者は363人と、23百万余りの人口を擁する国としては極めて少ない(死者は5人)。しかも台湾国内での感染者は51人に過ぎず、86%にあたる312人は海外で感染した台湾への入国者だ。

SARSの経験や国民皆保険制度(全民健康保険)などが抑え込み成功の理由として挙げられる。だが、金で抱き込んだWHOに台湾イジメをさせている「中国への意地」が何よりの原動力、と筆者は思う。「負けてたまるか」と思う気持ちほど、強く人間を苦難に立ち向かわせるものはない。

新型コロナ対策の陣頭指揮を取る陳時中・台湾衛生福利部長(Wikipedia)

台湾衛生福利部長として昼夜を分かたず活躍をしている陳時中氏は17年5月、WHOのテドロス新事務局長就任に際し次のように語っていた。

エチオピアは中国大陸と緊密な関係にあるが、新たな情勢の下で、台湾とWHOの関係が新たなモデルを生み出せることに期待する。我々は、アダノム氏の仕事の仕方は、専門性が比較的に高いのではと考えている。この観点からは蔡英文総統が重ねて提起する「新たな情勢、新たな解答用紙、新たな方式」が確認できる。このような専門性の高い新たな情勢の事務局長であるならば、我々としては新たな方式が発展することを強く期待し、希望している。

出典:陳時中・衛生福利部長:WHOの新情勢に期待(Radia Taiwan International)

だが残念なことに、マーガレット・チャン前局長(香港出身)と同様、WHOは極めて強い中国の影響下にあるようで、テドロス体制でも台湾疎外が続いている。

台湾で騒動:韓国人夫婦の検疫規則違反

その台湾で、年に一度先祖を供養する清明節4連休の3~4日に台湾各紙が報じたのは、韓国人夫婦の非常識な規則違反行為だった。

台湾は現在、海外からの入国者に14日間の在宅検疫を義務付けていて、中国・香港・マカオからの入国者には2月10日、韓国には2月27日、他の国には3月17日からそれぞれ適用している(4月5日からは検疫機関終了後さらに7日間の自主健康管理を求めている)。

在宅検疫では、自宅もしくは指定された場所で待機することが求められる。外出や公共交通機関の利用、出国などが禁じられ、また1日2回の自主的な検温も必要となる。が、高雄市保健局の発表などを報じた台湾各紙の記事からこの人騒がせな韓国人夫婦の行動を追うと次のようだ。

夫婦は2月25日(27日の2日前)に韓国から空路で高雄国際空港に到着、苓雅区のホテルに入った。夫婦は在宅検疫のため、そのホテルに3月11日まで14日間滞在した後に解放された。ところが、3月10日正午に二人が外出し、規則違反を犯したことが判明した。

その苓雅区は空港から車で20~30分ほどの、高雄市政府のある四維路を挟んで南北に1km弱、東西には東の高速道路から西の高雄港まで7~8㎞ある高雄市の中心地ともいえる地域で、ホテルも高級なのから手頃なのまで数多い。

夫婦が違反したのは「重度の特殊感染性肺炎の予防と治療に関する特別規則第15条2項」。違反者に科される過料は一人100,000~1,000,000台湾元(約37万~370万円)とかなり高額だ。夫婦には法務部行政執行署高雄分署から各々150,000元、合計300,000元(約110万円)が科された。

ホテルの知らせで警察は10日のうちに現地で違反通知をした。しかし、夫婦は執拗に規制に違反していないと主張、通知書への署名を拒否した。高雄市保健局も11日朝に行政仲裁書類をホテルに持参、保健局と警察が立ち会って署名を求めたが、夫婦は旅程通り墾丁に行くとホテルを出てしまった。

墾丁は高雄から南へ100㎞余り下った台湾南端の東西の岬に挟まれたバシー海峡を望む海岸で、国家公園(国立公園)になっている。目下市内での大勢の集まりが禁じられているので、この清明節には東側の花蓮などと並んで家族連れが多く訪れたと聞く。

夫婦はスマホの電源を切るなど行方を隠したものの、3月26日に高雄市警察に連絡してきた。その後、スマホの位置情報を使い、台北韓国事務所、台北市警察や保健局も加わって捜索した結果、4月2日に桃園国際空港から帰国するところを入国管理局に見付けられた。

空港で身柄拘束された韓国人夫婦(LINE TODAYより引用)

入国管理局の職員によれば、夫婦は旅行中にコミュニケーションの誤解によって罰金を科された、現金5万台湾元は使い果たしたなどと述べ、所持金は1,400元でクレジットカードも持っていなかった。高雄分署はその場で、生活費として400元を残し1,000元を取り立てた(何とも苛烈!)。

同分署は、罰金が支払われるまで出国が制限されることを夫婦に通知したが、夫婦は食物と宿泊の金がないと述べ、プライバシー侵害を訴えたという。同分署は韓国駐在員事務所と共に手当てした定住場所に夫婦を送り、韓国事務所には罰金をできるだけ早く支払うように助言した。

台湾が検疫を厳格化する背景

以上だが、2月25日は韓国を対象に入れた27日の2日前だし、14日間の在宅検疫なら3月10日は微妙なタイミングだ。そのあたりは記事になく「コミュニケーションの誤解」とはその通りかも知れぬ。だが、当局を振り切って3月11日から4月2日まで旅行を強行するとは、日本人には到底考えられない。

中世ヨーロッパの黒死病は、倒れた兵を蒙古軍がカッファ市内に置き去りにしたことに端を発した。もしその意図があるなら、爆弾を抱いた自爆テロと同様、疫病に感染したテロリストを送り込んで蔓延させ、相手国を機能麻痺に陥らせることできる。そして台湾の感染者の86%は海外で感染した入台者だ。

だからこそ流行国からの入国者に在宅検疫を適用し、高額な過料を設定している。それなのに、それを破った者に3週間もあちこちうろうろされ、折角の抑え込みを台無しにされては堪ったものでない。各当局が一丸となって夫婦を探し、なけなしの1,400元から1,000元を納めさせたのも頷ける。

それにしてもこの時期に外国に旅行し、どこかの国の卒業旅行生のごとく病気をもらってくるならまだしも、現地の規則を守らずに災禍の種をまき散らすかも知れぬ行為に及び、挙句プライバシー侵害まで主張するとは、その国民性には感動すら覚える。

他方、日台は冒頭の志村さんのことに限らずこのコロナ禍でも、ペルーとインドでお互いの在留者を自国民帰国用チャーター便に同乗させて助け合った。ともに地震国であることから大震災のたびに多額の寄付をし合ってもいる。国としては難しくとも、民間ではこの絆をさらに太くしてゆきたいものだ。