幸せは絶対値ではなく「ベクトル」で決まる

東京を始めとする国内の都府県に、遂に緊急事態宣言が出されました。コロナウィルスへの警戒は最大レベルになっていますが、個人的には2週間前よりも心理的な落ち込みをあまり感じなくなり、散歩しながら風景(写真)を楽しむくらいの余裕が出てきました。

ナゼなのでしょうか?

それは「ベクトル」が変わってきたと感じはじめたからだと自己分析しました。

マーケットも少しずつ安定を取り戻しつつあり、ボラティリティ(変動率)も低下してきました、まだ油断はできませんが、株価も一旦は底打ちしたようにも見えます。

オーストリアやデンマークなど、感染の広がりが押さえ込まれ、店舗や学校の再開を模索する動きが出てきたことがあります。

また、アメリカはカリフォルニアで感染者が増えていますが、欧州で被害が大きかったイタリアやスペインは、新規感染感染者数や死亡者数がピークを越えつつあります。中国の武漢では、制限はあるものの、封鎖解除され、日常生活が少しずつ戻ってきています。

コロナショックによる経済的、心理的打撃は大きいですが、人の気持ちとは現状の絶対値よりも「ベクトル」で決まります。「今どこにいるか」よりも「どちらに向かっているのか」が大切だということです。

甚大な被害が出ている現状よりも、そこから少しでも上に向かう兆しに、気持ちが反応しているのです。

これは、東南アジアの新興国にスタディツアーで出かけた時に感じたことと似ています。

日本の方が新興国よりも経済的には豊かなのに、新興国の人たちの方が豊かで幸セそうに見える。その理由の1つはベクトルにあります。「今日より明日はきっと良くなる」と信じられれば、そこに希望があり、幸せな気分になれます。

日本は、今は治安も良く暮らしやすい国ですが、10年後、20年後に、今より良い状態が待っていると考える人は少ないでしょう。

新興国の人たちの方が、日本人よりも幸福感を感じるのは、ベクトルを考えれば納得できます。

コロナウイルスとの戦いは、ベクトルが下向きから、水平に変わり、上向きになるのではないかという期待が少しずつ出てきました。

感染が広がり、死者の数が増えていくという局面から、感染者数がピークを打ち、死者の数が減少し、経済活動が再開される。あるいは、コロナウイルスの治療薬が開発され、実用段階に入る。そんな上向きベクトルのデータが増えてくれば、世の中は正常化に近づいていきます。

ゴールデンウイーク明けには緊急事態宣言も解除され、日本でも感染者数の拡大が抑えられ、日常の生活に向けてベクトルが上向きになっていることを心から祈り、油断しないでこれからの1ヵ月を過ごしていきます。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年4月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。