飲食店経営:逆境で見えてくる「ついていきたいリーダー」

臨時休業中の飲食店(東京・麻布十番で。編集部撮影)

飲食店経営者にとっては、厳しい経営環境が続いていますが、その対応は大きく3つに分かれているように見えます。

1つ目のタイプは、政府や自治体の支援を要求し、死活問題だと騒いでいる人です。自分がすべての意思決定ができる経営者なのに、うまくいかなくなると環境のせいにする「他責の人」です。開業直後や店舗拡大などタイミングが悪かった場合もあるでしょうが、まずは自助努力から黙々と進めるのがあるべき姿ではないでしょうか。

2つ目のタイプは、営業自粛や営業時間の短縮要請の中で、テイクアウトやデリバリーなどを工夫して、何とかこの逆境をしのいでいこうという経営者です。スタッフの健康を最優先して、思い切って店舗の営業を当面ストップさせる判断をしている経営者もいます。どの経営者も、何とか生き残ろうと必死に知恵を絞って動いています。

そして3つ目のタイプは、コロナショックのマイナスを前向きに捉えて、ビジネスモデルを急速に転換して、このピンチを史上最大のチャンスにしようとしている人たちです。

私の知り合いの飲食店経営者は、大変な時代とは「大変=大きく変わる」ことだと考えています。そこで、店舗での飲食経営から、テイクアウト、オードブル、デリバリーに大きく舵を切りました。何とか生き残るという後ろ向きな動きではなく、地域ナンバーワンのデリバリー飲食店に成長させるという攻めの経営です。

業態を変えていくのは、簡単ではないかもしれません。

しかし、リーダーとは今回のような困難な状況で弱音を吐いたり、責任転嫁をして逃げだすのではなく、自らを奮い立たせ、一緒に仕事をしているメンバーのモチベーションを高め、危機を好機に変えていく存在であるべきです。

自分が社員だとして、3つのタイプの中で、どのリーダーについていきたいかと聞かれれば、答えは明らかです。

逆境になればなるほど、闘志を燃やしそれを正面突破しようとする経営者。アプローチ方法は異なるかもしれませんが、そのマインドセットを見習いたいと思います。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年4月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。