恩返しもできぬまま…藤原啓治さんの死を悼む

田中 紀子

昨日、日本の声優界の大御所、藤原啓治さんが亡くなられたというニュースが飛び込んできて、衝撃を受けております。

藤原啓治さんが代表を務めていた所属事務所「AIR AGENCY」公式サイトより:編集部

藤原さんと言えば、もちろんご存知の方もファンの方も多いかと思いますが、クレヨンしんちゃんのひろし役をされた他、なんといってもアイアンマンのロバートダウニーJr.役の吹き替えをなさっていたことで有名です。

実は、藤原啓治さんには私たちご縁を頂き、大変お世話になったのです。

というのも、昨年1月にYoutubeにギャンブル依存症の啓発アニメをUPしたのですが、この3本のアニメの声優と音響監督をお引き受け頂いていたのです。

お医者様の役が藤原さんの声です。

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「藤原啓治さんに会って、一緒にお仕事をさせて頂いた。」と言うと、アニメファンや声優ファンの方から感嘆の声があがりました。
その声に、むしろ私の方が驚き、ますます恐縮していました。

もちろんアニメ制作など初めてのことでしたし、右も左もわからなかったのですが、たまたま高校の同級生が音楽プロデューサーをやっていて、この企画を色々な知り合いに繋いでくれたことから実現に至りました。

私たちは、依存症の家族支援には不可欠な「タフラブ」の概念、つまり
当事者の肩代わりや尻拭いを家族がやらない、手放す愛、厳しい愛で見守る
ということがあまりに知られておらず、むしろ依存症になったのは家族の愛情不足などと間違った認識も流布されていたことから、この言葉を広めたいと考えました。

そして同級生の繋がりから、私たちの趣旨に賛同して下さり、協力して下さったのが藤原啓治さんでした。

当時、藤原さんは体調を鑑みながら、少しずつ仕事復帰をされている状態でした。

タフラブはアニメの他に楽曲も作り、アイドルグループ神宿さんが歌って下さったり、2019年6月にはNHKみんなのうたで放映された「変顔体操」の両A面としてもCD販売され、渋谷と池袋のオーロラビジョンで流されたり、それなりに反響がありました。

しかしながら弱小団体の悲しさゆえ、アニメのPV自体は現在までに5000PVくらいしか視聴されておらず、藤原さんのような大物声優さんにご協力頂いたのに、そのご恩に報いることができませんでした。

皆さんもご存じの通り、アニメと言うのは手間暇も製作費もかかります。

もちろん私たちが作るわけですから、ローバジェットで最低限の経費しか出せませんでした。

殆どボランティアにしかならない、この作品になぜ藤原さんが快く協力してくれたのか?
もちろん同級生の繋がりが大きかったと思いますが、私としてはありがたすぎて、余計に恐くて、突っ込んで伺うことはできませんでした。

作品のラッシュができあがり、スタッフだけで小さな上映会を行った日に、口数少なく、話しかけられると照れ笑いをしながら、隅っこの方に座られ、最後の最後まで音響チェックをして下さった姿を今も覚えています。

細部にまでこだわって仕上げて下さったこの作品、もったいないほどクオリティの高いものが出来あがり、私たちの手元に残されました。

これから先も、多くの方に見て頂けるようこれからも努力しようと、今日改めて思いました。

藤原啓治さん、享年55歳。
奇しくも私と同い年で、誕生日はわずか1週間違いです。
あまりに早すぎる死。

藤原さん、お力を貸して下さり本当に有難うございました。

藤原さんのご恩決して忘れることなく、私たちも活動を続けて参ります。

ご冥福を心からお祈り申し上げます。
合掌