謝罪→遅すぎる!
有名タレントの岡村隆史氏は深夜ラジオの発言を批判され、所属事務所を通じて「私の発言により不快な思いをされた方々に深くお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした。」と謝罪した。
ナインティナイン岡村隆史のラジオ出演時の発言について (吉本興業)
自身のyahoo記事で岡村氏の発言を積極的に批判してきた藤田孝典氏はこの対応について「まずもって対応が遅すぎだろう。私が問題提起してから4日目、本人の問題発言から間もなく1週間である。」と批判する。
岡村隆史氏「『困っている女性が風俗に』大変不適切で深く反省」遅すぎる見解表明と問題意識の希薄さ(Yahoo!ニュース個人)
藤田氏は「対応が遅すぎ」というが、では何日なら「早い」のか何時間なら「適正」なのか。藤田氏は具体的な数字を使って話をすべきではないか。
藤田氏は岡村氏の発言がそんなに問題というならばYahooニュースで問題提起するのではなく、ニッポン放送に出向いて抗議文を提出するとかできたはずである。氏は埼玉県にある聖学院大学に勤めているようだから首都圏に疎いというわけでもないだろう。藤田氏は本当に岡村氏の発言を深刻に捉えているのだろうか。
そしてどうも藤田氏は今回の騒動で少なからず批判されたようで、それに不満を持っているようである。
氏が批判されるのは当然である。批判の内容があまりにも稚拙かつ攻撃的だからだ。
藤田氏は記事で岡村氏の発言を紹介する際にわざわざ「閲覧注意なので気分が悪くなった方は読まなくていい」と前置きをつけるほどである。岡村氏の発言は下品とはいえこれほど他者の表現を頭ごなしに否定する姿勢には驚かされる。
岡村隆史「お金を稼がないと苦しい女性が風俗にくることは楽しみ」異常な発言で撤回すべきではないか(Yahoo!ニュース個人)
このように藤田氏のネット上の文章は実に過激で「私は絶対にこういう発言は許してはいけないと思っている」とか「このような発言を面白おかしく取り上げてきたメディアも猛省すべきである」とか強い調子で言うが、もちろんこれはネット上だからこそ言える表現である。ニッポン放送に出向いた場合、とても言えまい。警察が出動するだけだろう。
藤田氏が主張するいわゆる「期待した福祉サービスを受けられなかった女性が意に反して性産業に従事してしまう」も何も証明されていないし、それでもまあ氏の経験からそういう例もあったのかなぐらいは思うが記事では別にそういう言及もない。
藤田氏の記事に出てくる「女性」とは岡村氏の言う「かわいい人」と同じである。「こういう考えがありますよ?」のニュアンスで出てくるフィクション的女性に過ぎない。
議論の活性化のために必要なフィクション的女性に過剰反応してもしょうがあるまい。
「勢い」で書いたような根拠
よほど批判されたことが不満なのか藤田氏は自己正当化のために岡村氏が「権力者」であることを強調する。
岡村隆史氏は知名度もあり、多くのファンを抱え、財力も発言力もある社会的な権力者である。
筆者は「岡村隆史」なる人間を評価するならばまず彼が「芸人」であることに触れるべきだと考える。子供は別としておよそ他人を評価するにあたってその職業に全く触れないなんて失礼な話ではないか。芸人は誇るべき職業でありしかも岡村氏は「成功者」の部類に入る人間である。岡村氏の「芸人」部分を触れないで彼の何がわかるというのだろうか。
藤田氏だって「藤田さん?ああ、ヤフー記事の執筆者ね。Twitterのフォロワーもたくさんだね。だったら知名度抜群で講演会収入も多いでしょう?」と言われたら怒るのではないか。
当たり前だが岡村氏に知名度があるのも多くのファンを抱えているのも彼が実力ある芸人だからである。若い頃からテレビに出ているからまあ、財力もあるだろう。最近、彼の日常生活を紹介した記事によると自宅で「ガンプラ作り」とか「干物づくり」とかそんな話しかでてこない。
彼は性産業への関心は強いかもしれないが、それ以外は特に派手ではない。
財力こそあれど岡村氏は自身の事務所を構えているわけでもないから「労働者を搾取している」という言葉もなじまない。「財力があるから権力者だ」なんて雑過ぎる意見である。言うまでもなく発言力も彼の実績の結果である。
あえて岡村氏を批判するとしたら昨年話題になった吉本興業と反社会的勢力との関係でベテラン芸人にもかかわらず積極的に発信しなかったことだろう。もっとも藤田氏はこのことに全く触れていない。氏は本当に岡村隆史に関心があるのだろうか。
確かに岡村氏は一般人ではない。「社会的な権力者」という表現も必ずしも間違いとは言えない。
だからといって藤田氏みたく「知名度もあり、多くのファンを抱え~」なんて「勢い」で書いたような根拠で他人を一方的に「社会的な権力者」認定して攻撃して良いわけがない。
藤田氏が交渉の窓口か?
藤田氏は岡村氏が謝罪したと思ったら「対応が遅すぎる」と批判し、彼の職業に一切触れないで「岡村隆史は社会的な権力者だ!」と批判し、これだけでも辟易するのに氏の記事を読み進めるとこんな記述にぶつかる。
謝罪ではニッポン放送が数行でコメントしたような形式的なものに終始させてはいけない。あれは謝罪していることを見せかける文章である。
(筆者注:最初に謝罪したのはニッポン放送)
藤田氏の理解ではまだ謝罪は終わっていないのである。しかし、不思議である。岡村氏の失言内容を考えれば謝罪対象として意識されているのはやはり女性であり、男性も含まれないわけではないがメインではない。
メインの謝罪対象でもない男性の藤田氏がなぜここまで謝罪にこだわるのか。この疑問を解くヒントがこの記述である。
周囲の人たちも岡村氏とともに、再発防止策、被害を与えた女性たちの補償のあり方、本人の番組降板も含めた中身のない謝罪ではなく、具体的で明確、そして厳正な処分を課していってほしい。
「被害を与えた女性たちの補償のあり方」とあるからこの騒動は今後、金銭のやりとりが発生する可能性がある。もちろん「被害を与えた女性たち」とは具体性のないフィクション的女性に過ぎず補償について吉本興業との交渉なんてできない。
おそらく交渉は藤田氏がやるのだろう。忘れてはならないのが吉本興業は昨年の反社騒動以来、社会的名声は著しく落ちているということだ。今の吉本興業の対外的交渉能力は高いとはいえまい。
また「本人の番組降板」という記述にも注目したい。
仮に岡村氏に謝罪以上の制裁を加えるならば、岡村氏の「異議申し立て」の権利は保障されなくてはならない。本来ならば適正手続きは謝罪の段階でも求められる。
しかし究極的制裁たる「番組降板」が声高に主張されてしまえば岡村氏は精神的に動揺し適切に「異議申し立て」の権利を行使できなくなる恐れがある。だから「本人の番組降板」など億単位の閲覧があると言われるyahoo記事に書くことではない。
それにしても今回の騒動での藤田氏は「異常」とか「醜悪」とか随分と過激な言葉を使っているが、氏は岡村氏に何かされたのだろうか。何か具体的な被害を受けたのだろうか。
筆者は「岡村隆史に何もされていないから」藤田氏の思考がインフレ化している印象しかないのだが、実際のところどうなのだろうか。気になるところである。