出口の先に待っているものは...「緊急事態宣言」

3月7日に発令された緊急事態宣言は、5月6日で終わる予定でした。しかし、ゴールデンウィーク中の5月4日に、今月末すなわち5月31日までの延長が決まりました。

特定警戒地域に指定されている関東圏、関西圏、北海道などの13都道府県は、今回の延長でそのままですが、それ以外の34県は、感染拡大防止と社会経済活動の両立に配慮して、自粛を緩和していくことが可能になりました。従って、それぞれお住まいの地域によっては、ゴールデンウィーク前と違う状況になっているかもしれません。

例えば静岡県では、映画館や劇場、商業施設などを自粛要請の対象から外す一方で、カラオケなどの遊興施設やパチンコ店といった遊技施設、それに屋内運動施設は17日まで休業要請を延長しました。それから、群馬県では、外出自粛や営業自粛などの要請を今月31日まで継続するが、ホテル・旅館などの宿泊施設や、ゴルフ場などの運動施設に関しては、延長後は対象から外しました。宮崎県では、7日から大学や映画館、運動・商業施設など、11日からバーやパチンコ店などの営業再開と飲食店の通常営業も11日から解禁されます。

ただし、緊急事態宣言は県外を超えた人の移動もありますから、全国に出ていることかわりはありません。そして5月31日まで延長されましたが、状況を見て早く解除することもあり得るとのことですが、逆に再延長することだってあり得るわけです。

最近、「出口戦略」という言葉がよく聞かれるようになりました。すなわち、どうなれば日常に戻れるのかです。例えば、感染者数が1日に何人以下になったらなどの基準をわかりやすく示すべきだという声が高まっています。

そこで、5月の5日に、大阪府の吉村博文知事が大阪府独自の出口戦略を、こういう形で出しました。

外出自粛や休業要請を解除する際、医療崩壊を起こさないことをポイントとした3つの判断基準
① 陽性率が7%未満であること
② 感染経路のわからない人の数が1日の新規陽性者のうち10人未満であること
③ 重症者向けの病床の使用率が60%未満であること

上記3つの基準を7日間連続で満たせば、休業要請などを15日から段階的に解除する方針です。この発表のときに吉村知事は、「具体的な基準を示さず、単に(宣言を)延長するのは無責任だ。具体的な指標を全国に示してもらいたい」とチクリと言っていました。これに対して、西村経済再生担当大臣は、「休業の要請・解除は知事の裁量。解除する基準は当然ご自身の説明責任。都道府県の裁量・権限の拡大を主張しながら、自身の休業要請の解除の基準を国が示してくれというのは矛盾。仕組みを勘違いしているのではないか」と反論しました。

西村大臣は、緊急事態宣言解除の出口戦略は国が示すけれども、施設などについての自粛要請は知事の仕事だということを言いました。そして吉村知事も「宣言(基本的対処方針含む)が全ての土台なので、延長するなら出口戦略も示して頂きたかった。今後は発信を気をつけます。ご迷惑おかけしました」と発言しました。しかし、吉村知事からすれば、「だったら、何でも大阪の方でどんどん進めますわ」と国からお墨付きをもらったような形になったと思います。

それからはっきり言って、ただでさえ対応が遅いと言われている国ですけれども、この出口戦略についてもやっぱり遅いと、思われたことは事実です。でも皆さん、出口戦略は確かに必要ですが、早く言えばいいっていうものでもありません。感染者数がまたは拡大していったら、出口の先に自粛の入り口がまた迫ってきますよ。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年5月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。