岸恵子さんの日経連載「私の履歴書」はナゼ面白いのか?

内藤 忍

日本経済新聞の名物コーナー私の履歴書。今月の執筆者女優の岸恵子さんです。

日本を代表する大女優としてお名前は存じ上げていますが、私の母の世代の方のようで、どんな女優活動をされているのかは、ほとんど知りません。

しかし、この連載を読んでいると、女優としての外見の美しさだけではなく、人物としての天真爛漫なキャラクターに、気がつかないうちに魅了されてしまいます。

紹介されるエピソードからにじみ出るのは、気が強く自分の主張をはっきりと言わなければ気が済まない性格。世の中の変化を鋭く感じ取るセンス、そして気取らない明るいキャラクターです。

そして、ひょんなことから映画に出演し、人気者になってスターへの階段を駆け上がっていく。その意外性のある人生の展開が、表現力豊かな文才と相まって、短編小説のように面白いのです。

いつも思うことですが、安定した人生を過ごした人の私の履歴書は、あまり面白くありません。

例えば、東京大学を卒業し、官僚になった「エリート」の回顧録。あるいは、サラリーマン経営者が、会社の組織の中でどうやって出世したかの自慢話。そんな人「順風満帆な人たち」には、魅力を感じません。

それよりも自分の才能と努力だけで活躍した芸能人や芸術家。あるいは、ゼロから会社を作り上げた起業家型経営者の「波乱万丈な人たち」の生き様にこそ、人生を豊かにするためのヒントが詰まっています。

ジェットコースターのような人生の中で、どんなことを考え、どうやって危機を乗り越えてきたのか。そこにこそ、この連載の価値があると思うのです。

岸恵子さんの連載は、まだ3分の1が終わっただけですが、これからの展開が本当に楽しみです。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年5月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。