さてもう夏日が増えておりますが、自衛隊は夏場のCBRN(化学、生物、放射性物質、核兵器)環境における戦闘は不可能です。
温暖化のせいもあって、我が国では熱帯のシンガポールよりも高温多湿という日も少なくありません。ところが車輌、特に装甲車輌のクーラー装備率は極めて低いのが実態です。
NBCシステムが搭載されていてもクーラーが搭載されていなければ真夏の戦闘は無理です。
クーラー付きはNBC偵察車などごく一部です。化学防護車には後付もされていません。
16式機動戦闘車は今年度調達分からクーラーが装備されますが、既存の車体には搭載されておりません。96式装甲車なども同様です。実質的な陸自の主力APCである軽装甲機動車に至ってはNBCシステムが搭載されていません。
10式戦車もすでにご案内ですが、基本人間用クーラーはついておらず、機器冷却用クーラーのおこぼれで多少涼しいレベルでしかありません。
防衛省は常々「我が国固有の環境に適した装備」が必要ということを言い訳に、国産装備を調達しているわけですが、ホントですかね?と言いたくなります。
どうも化学科はCBRN事態には化学科だけで対処するつもりでいるようです。自衛隊には諸兵科連合、3自衛隊統合でCBRN作戦をやる気も能力もないということです。
先の東日本大震災でもNBCスーツの備蓄は殆どないことが露呈しました。またヘリや固定翼機などの航空用のNBCスーツは存在すらしていませんでした。これは陸自だけではなく空海自もです。
また海自護衛艦にはNBCシステムが装備されておりますが、フィルターは外国製でほとんど備蓄もありません。国産兵器大好きな皆さんの大好きな「国産護衛艦」がこの有様です。
これでは、例えばある地域で特に夏場アウトブレイクが起って、その地域を封鎖して自衛隊が救助や医療活動を行うことはできないでしょう。
中国軍や北鮮軍は紳士の集団なので、夏場には攻めてこない、特にNBC兵器は使わないとでも思っているのでしょうか。とても有事を想定している組織とは思えません。
Japan In Depthに以下の記事を寄稿しました。
European Security & Defence に以下の記事を寄稿しました。
Hitachi wins Japanese bulldozer contract
東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2020年5月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。