人種差別抗議デモ激化、米大統領選への影響は?

安田 佐和子

黒人男性が5月25日、白人警察官にミネソタ州ミネアポリスで尋問を受けた際に首を抑えつけられ死亡した事件で、全米が揺れています。

(カバー写真:Geoff Livingston/Flickr)

事件後で最初の週末にかけ、人種差別抗議デモが激化。ミネアポリスを始めカリフォルニア州サンフランシスコ、イリノイ州シカゴ、フロリダ州マイアミ、ジョージア州アトランタなど25以上の主要都市で夜間の外出禁止措置が講じられました。経済活動が再開してまもない米国経済を直撃しかねません。

画像:LA市長、午後8時から午前10時までの外出禁止令を発表

(出所:MayerofLA/Twitter)

ソーシャルメディアでは、トランプ大統領による暴力を扇動したとされるツイート問題もあって糾弾する声が大いに高まり、女性アーティストのテイラー・スウィフトによるツイート「選挙で敗北させてみせる」への“いいね”数は200万件超え、彼女史上で最高を記録するほど。民主党のバイデン候補はオバマ政権での副大統領だった事情から予備選でも黒人票を束ねてきただけに、米大統領選への影響が気になるところです。

というわけで、過去の抗議活動と選挙結果を振り返ってみました。時期は、運動の開始時期を表します。

〇2013年7月:黒人の命だって大切(Black Lives Matter
※報道ベースでの警官による黒人男性殺害事件は2014年に3回(7~8月、11月)発生
⇒2014年の中間選挙結果
あ上院:共和党が9議席増やし多数派を奪回
あ下院:共和党が13議席増やし多数派を維持

〇2011年9月:ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street
⇒2012年の米大統領選はオバマ氏が332対206で再選
⇒2012年の議会選挙結果
あ上院:民主党が2議席増やし多数派を維持
あ下院:民主党が8議席増やすも共和党が多数派を維持

〇1992年4月:ロドニー・キング事件(ロス暴動)
⇒米大統領選:民主党のクリントン候補が370対168で勝利、現職のブッシュ氏が敗北
あ上院:改選前と変わらず、民主党が多数派を維持
あ下院:共和党が9議席増やすも民主党が多数派を維持

結果をみると、以下の事実が判明します。

・現在と同様に人種差別抗議デモが発生した1992年は、大統領選と議会選含め民主党に有利な結果に(ただし景気動向も配慮する必要あり)
・格差問題が取り上げられた2011年は、翌2012年に大統領選と議会選共に民主党に有利な結果に(金融危機後という経済状況を配慮する必要あり)
・再び人種問題に焦点が当たった2013年を経て、2014年は共和党に有利な結果に(景気回復がやオバマケア成立などが影響した可能性あり)

必ずしも、抗議活動が選挙結果を左右するわけではありません。しかし、どちらかというと民主党に有利に働いた感は否めず。失業率の動向などトランプ大統領に不利な状況であり、さらに経済活動が再開し景気回復が期待されるなかで抗議デモ活動が冷や水となりかねません。何より、継続受給者ベースで米国人の3人に1人が失業している状況では、抗議活動に参加する人々も後を絶たないでしょう。

トランプ大統領が、この逆境をどのように跳ね返すのか。対するバイデン候補は、自分に投票しなければ「黒人じゃない」と語るように失言が多く、トランプ氏再選の余地は十分残っていると言えますけどね。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年5月31日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。