なぜコロナ死亡率の低い日本人が最も悲観的なのか?

日本はコロナウイルス感染対策に関しては、人口10万人あたりの死者数などの数値で見れば、対策が的確であったかは別として、現時点では結果的にその制御に世界で最も成功した国の1つと言えると思います。

ところが、プレジデントオンラインで紹介されていたコンサルティング会社の調査(図表)によれば、他国と比べるとコロナウィルスに対し圧倒的に悲観的で、今後の家計支出の増加にも消極的な状況が浮かび上がってきます。

同記事では、アメリカでは既に夏のバカンスの予定を立てたり、旅行会社が予約の受付を開始し、申し込みが殺到するといった状況になっているそうです。

ところが、日本では夏休みの話をしても、なんだか不謹慎なような雰囲気があったり、東京から観光地に出かけるのは何だか悪いことのように見られています。

これは、日本人が元々潔癖症で、慎重な国民であるせいかもしれません。しかし、もう1つの要因は、日本人が国内の情報によって、悲観方向にバイアスをかけられていることが作用していると思います。

1000万人以上の人が暮らしている東京で、1日にわずか20人程度の新規感染者が出ただけで、今も大騒ぎしています。

メディアも「20人越えは〇〇日連続」「〇〇日ぶりに2桁の感染者」といった表現で、警戒モードの報道を続けています。新規感染者は少ないに越したことはありませんが、感染経路不明なのか、病院での集団感染なのかによっても、その意味は大きくことなります。数字だけが独り歩きして、誤差ともいえる範囲で増えた減ったで一喜一憂するのは、あまり意味がないと思います。

確かに感染が再度拡大すれば、自粛などの対応が再び必要になります。しかし、このまま新規感染者数0人になるまで、自粛によって経済活動を控えていれば、それによるマイナスの影響の方が圧倒的に大きくなると思います。

海外で経済活動が再開されるニュースは、感染の再拡大が懸念されるというようなネガティブなトーンで報じ、相対的に問題の少ない日本国内においては、警戒を解かないように慎重すぎるくらいに慎重にすべきと呼びかける。

海外でやっていることが全て正しいとは言いません。しかし、日本国内の新型コロナウイルスの情報は、世界から見ればかなりバイアスがかかっているように見えます。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年6月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。