やっぱりテレワークは日本では思ったほど広がらない「3つの理由」

最近、東京メトロに乗る機会がありました。まだ、以前ほどの混雑には戻っていませんが、緊急事態宣言当時(写真)よりは、かなり乗客が増えていました。

ベンチャーIT企業の中には、オフィス自体を廃止して、全社で完全なテレワークを行うところもあると聞きます。

このように、新型コロナ騒動を機に、日本でもテレワークは緩やかに広がるとは思います。しかし、このブログでも指摘したように、多くの人が期待するほどには、普及しないと改めて思いました。それはこのような理由からです。

理由1.貧弱な住宅環境
テレワークは自宅での業務が中心になると思いますが、多くの家には仕事をするためのスペースがありません。

ダイニングや子供部屋を使って仕事をすることになります。貧弱なインフラでの業務は短期的には耐えられても、長期では生産性をむしろ低下させることになりかねません。

理由2.曖昧な業務範囲と人事評価
日本の会社では、各人の業務範囲が曖昧で、コミュニケーションしながら手分けする仕事の方法が一般的です。テレワークでは、このような業務の分担が機能せず、結局オフィスで仕事した方が楽ということになってしまいます。

また、人事評価が成果に応じた合理的なものにならないと、結局は会社にいる人が有利な評価になる恐れがあります。

理由3.オフィスのコミュニティ機能
日本では、特に都心部では地域コミュニティが発達せず、会社がその機能を担っている側面があります。

社員同士が仲間であり、友達のような関係にもなっているのです。テレワークになって、そのようなコミュニティが無くなるのが寂しいという人も少なくないのです。

このように考えると、テレワークだけで仕事ができる人は、日本では一部のビジネスパーソンに限られると思います。逆に言えば、日本でテレワークが本格的に普及するのは、上記の3つの理由が変化していった時ということになりそうです。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年6月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。