一昨日、日銀短観が発表され景況感は11年ぶりの低水準になりました。
日銀短観というのは、銀行中の銀行、日本銀行が四半期ごとに実施している企業短期経済観測調査(短観)は、業績や状況、設備投資の状況、雇用などについて実績と今後の見通しに関する調査で、企業や経営者の現状や先行きの認識と言えます。企業の回答を景気が「良い%」から「悪い%」を差し引いて指数を算出し、これを業況判断指数(DI)といいます。
それでは今回発表されたDIを見てみましょう。
全国企業短期経済観測調査 2020年6月調査
DI値(3月調査からの変化幅) | |
大企業 製造業 | -34(26pt悪化) |
非製造業 | -17(25pt悪化) |
中堅企業 製造業 | -36(28pt悪化) |
非製造業 | -27(27pt悪化) |
中小企業 製造業 | -45(30pt悪化) |
非製造業 | -26(25pt悪化) |
※ptはポイント
大企業の製造業は大幅に悪化してマイナス34、非製造業はマイナス17、中堅企業の製造業はマイナス36、非製造業はマイナス27、中小企業になると、製造業はマイナス45、非製造業はマイナス26となっているので規模が小さくなると、基本的には景況感がより悪化していると言えます。その中でも最も影響を受けているのが非製造業の中の宿泊飲食サービスです。
宿泊・飲食サービス 製造業(自動車) 製造業(鉄鋼)
大企業 -90(32pt悪化) -72(55pt悪化) -58(43pt悪化)
中堅企業 -94(25pt悪化) -77(67pt悪化) -60(33pt悪化)
中小企業 -87(35pt悪化) -79(70pt悪化) -64(30pt悪化)
みんな旅行などに行けませんでしたからね。
企業規模に関係なく、なんとマイナス90前後、それに続くのが製造業の自動車でマイナス70台、さらに鉄鋼もマイナス60近辺となっています。一方でプラスになっているのが、巣ごもり消費が続きましたので、スーパーなどの小売り、その他に通信や情報サービス、建設などごくわずかな分野です。わずかなプラスで他はほとんどがマイナスですから、全産業を見てみるとこうです。
全産業
大企業 -26(26pt悪化)
中堅企業 -30(27pt悪化)
中小企業 -33(26pt悪化)
ところで、大企業というのは、株式を公開している会社が多いわけですが、東京証券取引所における株価はいったいどうなっているんでしょうか。
この株価を見て私は最近つくづく「これで大丈夫なのかなあ」と考えていました。というのも経済が良くないのにこの株価に、「なんか変じゃないかな」と思っていたんですが、そこに気になる情報がありました。
先週6月25日に国連の金融に関する専門機関IMF(国際通貨基金)は、報告書を公表しました。その中で日本の株価上昇を、「景気の先行きに大きな不確実性がある中で株式市場と実体経済にかい離が生じている」と書かれています。数字的には、1月の中旬、すなわちコロナの混乱が始まる前の株価の高値水準に対して85%まで回復しているからです。IMFは2020年の世界経済の成長率をマイナス4.9%と予測し、4月時点から1.9ポイントさらに下方修正し、「世界経済は『大封鎖』に陥り、大恐慌以来で最悪の景気後退だ」とコメントしています。日本については世界よりも厳しい数字で、リーマン・ショック後の09年のマイナス5.4%を下回る水準のマイナス5.8%と見込んでいて、当然企業収益も落ち込むとみています。
ではなぜ経営状態が悪いのに株価は上がるのか。はっきり言って、日銀が金融緩和したお金が株式市場に流れ込んでいると私は思ってきましたし、IMFもそう書いています。
先ほどの日銀短観は、これからの先行きについてもDIを発表していますが、それはこちら。
先行きDI値(変化幅) | |
大企業 製造業 | -27( 7pt好転) |
非製造業 | -14( 3pt好転) |
全産業 | -21( 5pt好転) |
中堅企業 製造業 | -41( 5pt悪化) |
非製造業 | -29( 2pt悪化) |
全産業 | -33( 3pt悪化) |
中小企業 製造業 | -47( 2pt悪化) |
非製造業 | -33( 7pt悪化) |
全産業 | -38( 5pt悪化) |
株価も半年から1年の先行水準を示すと言われていますが、そう考えると、片や下がる数字なのに、一方では上がっている。これで大丈夫なんでしょうか。そしてIMFは市場が過度に楽観している可能性があると言っていますが、大変なことが起きなければいいんですけれども・・・・。
儲けようとして株式投資をしている人、大丈夫ですか。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年7月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。