飲食店の料金と満足度は比例しない

外食生活主体の生活をしていますが、食事が終わって会計する度に、いつも思うことは、飲食にかかる費用と満足度は比例しない。5万円のディナーは500円のファストフードの100倍満足できるとは限らないということです。

1本160円の焼き鳥(写真)を食べて満足することもあれば、有名店で大枚をはたいて食事をしても物足りないこともあります。高くても、それに見合った満足度が得られず、再訪しないお店というのも意外に多いものです。

それには、いくつかの理由があると思います。

そもそも、「限界効用低減の法則」というのがあります。これは、経済学上の概念で、1単位の増加から得られる効用は,消費量が増加するのに伴い、低下していくという法則です。

1万円の食事代が、2万円、3万円と大きくなっていくにつれて、その増加費用から得られる効用は小さくなっていく。これは飲食にも当てはまります。

また、飲食ビジネスとは、ブランドビジネスでもあります。行列の絶えないラーメン店の評価が高いのは、「行列=美味しい」というバイアスがかかっているからです。ミシュランのようなガイドブックや、グルメサイトの評価も影響します。高評価のお店に行ってガッカリした経験は誰にでもあると思いますが、高評価が定着してしまうと、それに逆らう意見が言いにくくなってしまい、評価が固定化するのです。

そして、何と言っても、味覚というのは極めてパーソナルで主観的なものだということです。しかも、体調やお店の雰囲気、スタッフの対応といったトータルな経験から満足度が決まっていくものです。

例えば、私が好きなお店は、お料理とお酒のバランスが良く、スタッフのホスピタリティ溢れる、楽しくなれるお店です。どんなに素晴らしいお料理であっても、店主に気を遣うようなお店では、リラックスできず、その価値は半減してしまうからです。

ところが、世の中にはそんな緊張した雰囲気を有難がって、喜んでお金を払う人もいるのです。そんな価値観の違いは、好みですから変えようがありません。

それでも、予約が取れない高級店に誘われれば、出来る限り予定を調整して出かけるのは、時にそこでしか経験できない、お金に換算できない大きな感動を味わうことがあるからです。

いつもは10倍払っても、10倍満足しない。でも、時々桁外れの感動がやってくる。飲食というのは奥深い世界です。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年7月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。