たった1%のデジタル〇〇

今は「with コロナ」ですが、やがて迎える「after コロナ」についてはこれまでも何度か取り上げてきましてたけれども、世の中は大きく変わっていきます。

中でも間違いなく、特に重要と言えるのがDデジタルトランスフォーメーション(DX)です。DXを簡単にいうとデジタルによる変革、デジタル化ですが、世界各国では日本よりも、一歩も二歩も三歩も先を行っていますし、今でもデジタル化を進めています。

今回の新型コロナ感染拡大で、否応なく日本でもデジタル化が進んだものもあります。例えば、出勤しない在宅勤務やテレワーク、学校に行かず自宅で授業を受けるオンライン授業、病院に行かずして診療を受けるオンライン診療などです。これらは、三密を避け、感染が拡大しないようにということで余儀なく進みました。しかし、日本は自然災害も多く、コロナが終わった後も、課題解決のために重要です。例えばオンライン授業であれば、教員不足もありますが、子供たち学習内容にもっと関心が持てる授業をオンラインで行ったり、オンライン診療の場合では、過疎地の医師不足、都会での医師不足も、やはり課題解決に繋がります。

そしてテレワークは企業の生産を高める、すなわち競争力を高めることにも繋がります。全ての仕事がテレワークでできるわけではありませんが、可能なものをテレワークにすることができれば通勤時間も交通費もオフィスの賃料も減らすことができます。それは世界の中で勝負する企業にとっては重要です。別にうちは輸出して国際競争しているわけではないという国内企業だってもちろんいっぱいあるわけです。けれども、生産性の上がった製品やサービスが海外からどんどん日本に入ってくれば、淘汰されてしまいます。

もちろんデジタル化に政治の果たす役割も大きいです。すでに取り上げましたが、今年度まだ3ヶ月しか経っていないのにもにもかかわらず補正予算が2回も組まれました。この補正予算、いわゆるコロナ対策ということで異例中の異例ではありますが、しかしその巨額な補正予算のうち、デジタル化関係の予算は全体の1%しかありません。第1次補正予算では、デジタル関連の経費は約4300億円、第2次補正予算では1600億円程度です。確かに助成金や給付金で個人や企業を救うことも今大事なんですけれども、各国ともそういうことをやりながらコロナ対策としてデジタル化を推進しています。

例えば中国では、コロナ対策の経済復興投資の中で、5Gの普及の基盤となる基地局の建設が柱になっています。ただでさえ今年の末には世界の5Gの基地局の半分以上を中国が占めます。現段階で、中国の通信事業大手3社の5G契約件数はとっくに5000万件を超えています。さらに、5G対応スマホは現在で80種類以上にのぼり、年内には100種類にもなるそうです。中国のトップ、習近平国家主席は「5G通信網やデータセンターなど新しいインフラ建設を加速しなければならない」と、もうハッパかけまくっています。5Gも既に取り上げましたが、自動運転始めとした様々な物事が世界を変えていくんですよ。

そもそも日本のデジタル化は遅れています。マイナンバーなんか今回全然役に立たなかったでしょう。総務省の情報通信白書によれば、2017年の我が国全体のICT投資額は約16.3兆円。これ、17年前の2000年が20兆円でしたから20%落ちています。これに対して、アメリカは日本の4.5倍の70兆円で、2000年に比べて50%伸びています。フランスは2倍近く伸びており、イギリスだって3%伸びています。減っているのは日本ぐらいです。

政治にしっかりしてもらいたいところですが、自民党の中には利権漁りばっかりやって、新しいものを作ったり、古い施設を建て替えたりという地元の利益誘導ばかりやっていますからね。短期的にはそうした従来型の事業で景気刺激はできるでしょうけれども、人口減少、そして少子高齢化の10年後の日本は確実にシュリンクしてしまいます。そうなれば、世界から遠く離されて、取り返しがつかなくなっちゃいます。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年7月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。