イギリスBBCの政治トークショー番組が19日朝(現地時間)、ゲストの駐英中国大使に対し、ウイグル人の強制収容所を撮影したとされるドローンの映像を見せながら、中国政府のウイグル政策を追及した様子を放映。世界中のネットで大反響となり、日本のネット民もBBCに喝采を送る一幕があった。
この番組は「アンドリュー・マー・ショー」。BBCで政治取材を長年行ってきたジャーナリスト、アンドリュー・マー氏が15年来、司会を務める日曜朝の名物番組。国内外の閣僚クラスの要人のほか、ときにはエルトン・ジョンのような著名人もゲストに招き、時事問題を討論する。
19日の番組では、中国の劉暁明・駐英大使が出演。マー氏は、ネット上で拡散していた、新疆(ウイグル自治区)の強制収容所と思われるドローン動画を大使に見せて「何が起きているのかお話しいただけますか」と追及した。
劉大使は不意を突かれたのか、「私にはこれが何かわかりません」と答え、マー氏に新疆に「いらしたことはあるか」と話をすり替え、「新疆を見るまで中国の本当の美しさはわからない」という自国の“風説”を強調。しかしマー氏は「大使、これは美しい映像ではありませんよね」と言い返し、西側情報機関への確認に基づき、映像に写っているウイグル人が電車に押し込まれ、移送されているなどと追及し続けた。
さらに劉大使が新疆の人口が40年で倍増したと述べたが、マー氏は中国政府の地元当局の統計を引用、新疆のウイグル人自治区の人口が2015〜18年にかけ84%減少したと真っ向から否定した。劉大使が「倍増」と強調したのは漢民族の人口を含めてのミスリードだったとみられる。
番組ではさらに、ウイグル人女性への不妊手術の強制疑惑を取り上げ、手術を受けたという女性の生々しい証言映像も放送。劉大使が「広範囲に大々的に強制手術が行われていることはない」と否定すると、マー氏は「彼女がウソをついているとでも?」と反論。さらに国連のジェノサイド禁止・処罰条約に基づいて「中国が追及されることになる」のではと畳み掛けると、劉大使は最後まで懸命に否定していた。
一連のやりとりはネット上にも配信され、たちまち世界的に拡散。BBC Politicsのツイッター動画の再生回数は1日で585万回を記録した。
日本国内ではBBC NEWS JAPANが20日昼にツイッターで日本語の字幕をつけて配信。再生回数は半日で100万回近くにのぼるなど、日本国内のネットでも大反響となった。
有識者では、地政学や戦略学に詳しい奥山真司氏が劉大使の反応について「苦しい反論」と論評。
日本維新の会の足立康史衆議院議員は、「キャメロンからジョンソンに代わって英国政府の対中政策や放送政策が激変し、BBCもその役割を果たすために懸命です」と背景を解説した。
ジャーナリストの門田隆将氏は「英は米と共に中国糾弾の先頭に躍り出た。どうする、日本」と我が国政府の立場を問いかけた。
BBC日本語版のツイッターに一般のネット民からも多数のコメントが寄せられ、
中国大使館からの苦情を恐れる日本のメディアとはずいぶん違いますね。
NHKもこの位の事やってみやがれ
などと、NHKを中心に日本メディアとの比較や、BBCに追随するように求める意見も相次いだ。
一方、このツイッターには、
自信をもって 大使は話している。キャスターは 逃げ腰。まぁ、この程度なんですな、BBCは
極端に中国政府を擁護するコメントも散見。こうしたアカウントについても反発するリプライが続出し、中国共産党のネット宣伝工作員である「五毛党」ではないのか、との指摘が相次いでいた。