コロナ対策で各自治体が財源に余裕がある年度に積み立てておく貯金、いわゆる財政調整基金が激減しています。
コロナの感染拡大を受けて、4月7日に政府は緊急事態宣言を出しました。これを受けて今度は都道府県がお店などに休業要請をしました。各都道府県や市町村などは休業要請に応じてくれた事業者に協力金などを給付しましたが、その原資は貯金である財政調整基金を切り崩して対応したわけです。
財政調整基金 取り崩し額上位5自治体
1 東京 8521.2億円
2 大阪 796.5億円
3 神奈川 167.1億円
4 茨城 145.5億円
5 石川 108.8 億円
東京都は財政調整基金を8521億円取り崩しましたけれども、これは別格ですね。
私が住んでいる神奈川県で167億円を取り崩しています。また、今年度に入ってからの残高減少率はこうなっています。
財政調整基金の残高減少率の上位5自治体
1 石川県 91.9%
2 東京都 91.2%
3 山口県 88.3%
4 茨城県 81.2%
5 秋田県 76.0%
これらの都県は、財政調整基金が底をついている感じですね。
私が市長を務めた横浜市の現段階での残高が28億円となる見通し。
皆さん個人で考えれば28億ってすごい数字ですが、私、この数字を聞いて、正直愕然としました。
新型コロナが発生する前に組んだ、今年度の当初予算ですでに36億円を取り崩していましたので、その段階で残高が38億円になっていました。
私が市長を退いてから、当然ですが横浜市政に口を出したこともないし、公なコメントも控えてきました。しかし、これはダメですね。
私の市長退任後、財政調整基金はガクンと減り、昨年度末に74億円にまで減っていました。
私の市長就任前の財政調整基金は150億円規模でした。そこで私が平成14年に就任をし、行政改革をやって毎年基金を積み増してきました。市長就任から6年目に基金残高は249億円になりました。ということは、150億円レベルが250億円レベルへ100億円を積み増したわけです。
しかし、私が市長になって7年目の平成20年度には基金残高が180億円に減り、翌8年目にはさらに150億円にまで減少しました。なぜならば、平成20年にリーマンショックが起こったからです。
市長になる前から一貫して、私は次の世代のために財政再建する、そのために市政運営を進めていましたけれども、リーマンショックという大きなことが発生をして、ここで貯金を取り崩したわけです。いまだに「中田、このやろう」と言う横浜市民がもちろんいて、嫌われることもあります。それでも、財政を健全化するために様々な見直しを行ってきました。
話は変わり、今ヨーロッパで企業支援に迅速にかつ大規模に取り組んでいる国があります。それはどこでしょう。その答えはドイツです。
今、世界中で企業支援をやっています。日本も、雇用調整助成金や持続化給付金などなど、様々な対策をやっています。EU加盟国(27ヵ国)と移行期間中でEUルールが適用されるイギリスを含む28ヵ国、そのそれぞれの国が自国の企業支援をやっています。その28ヵ国が行っている企業支援額全体のうち、43.5%をドイツが占めています。なぜドイツはそんな事ができるかというと、ドイツの財政がしっかりしているからです。現メルケル政権は昨年度まで6年連続で新規国債の発行ゼロ、すなわち借金を新たにしていません。だから、ここにきて思い切った支援ができているんですね。こういうときこそ借金をするんだという事です。
まさに未曾有の危機というこういう、いざというときのために必要なのは余力ですね、国だけではありません。企業だってそうです。今、株価が堅調な会社にはそうした共通項があります。単に売れ筋の商品を持っているかどうかで株価の堅調に繋がっているのではなく、企業体力があるかどうかです。体力があれば新しい工場を作ることだって出来ますし、復活も可能です。
我が国のどの政権も、これまで正直、財政健全化に確固たる意志はありませんでした。そして、この危機に際して国民も会社も「金を出せ」という状態になっています。先日、第二次補正予算の時にも言いましたが、1年のまだ3分の1しか過ぎていない今の段階で、日本の借金(公債金)は90.2兆円(当初32.6兆円、1次補正25.7兆円、2次補正31.9兆円)です。言っておきますが、1年間の予算は100兆円の国ですよ。
今は危機なんだから借金で賄うという言い分、私はわかりますし、理解できています。でもそれは、日頃しっかりやってきた人のセリフだと思います。
国も都道府県も市町村も、このままでは・・・・・・。
私はこれまでも言ってきたし、やってきたんですけどね。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年7月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。