レジ袋有料化で失う大きなものはお金ではなく「時間」

黒坂 岳央

黒坂岳央(くろさか たけを)です。
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写真AC:編集部

先日書いた有料レジ袋にキレる人たちが気付かない5つの誤りという記事がヒットした。「読んで痛快でした!」と嬉しいお声も読者さんからもらった。そんなに多くはないけど。オレは自分が言いたいことをブチまけてスッとしたつもりだったが、実はまだこのレジ袋戦争は終わっていない。今回もレジ袋について述べたい。

レジ袋有料化がスタートして、想像以上に不便を感じる。何がって「袋いりますか?」ってこれまで不要だったやり取りが発生していることについてだ。おっと、最初に言っておくが「袋いりますか?」と聞かれてオレはムカついたりしない。むしろ、店員さんを気の毒に思う。彼ら/彼女らは一日、何回このセリフをいい、そしてその内何回かは客からキレられていることだろう。悪法の犠牲者たちのご苦労へ感謝の気持ちを届けたい。

オレはレジ袋が有料化したところでコスト面は気にしない。この程度の少額コストを、どれだけ積み上げても大したことはないからだ。人生は何も変わらない。むしろ、レジ袋有料化で失うものの本質はお金ではなく「時間」だ。こっちはヤバい。

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ムダなやり取りで失う時間

コンビニやスーパーで買物をすると、下記のようなやり取りをすることがある。

店員さん「ポイントカードはお持ちですか?」

オレ「いえ、ありません」

店員さん「お作りしますか?」

オレ「いえ、今回はやめておきます。ありがとうございます。」

 オレはこの手のやり取りはしたくない派だ。たかが数秒間、されど数秒間。来店のたびにこの往復を回避するため、ある程度利用を継続する予定の店舗では、止む無くポイントカードを作っている。個人的には、持ち物を減らしたい。カード一枚でもムダなものは一切持ちたくないけど、ムダな時間を失いたくない。だから泣く泣くポイントカードを作ることがある。

だが、ここに来てレジ袋が有料化した。それによって「レジ袋いりますか?サイズは?」というやり取りがアドオンされたのである。しかもポイントカードと異なり、商品を店から持ち帰るあらゆるお店が対象だ。これは辛い。買い物で失うムダな時間が増えたではないか。ほぼ日本人全員がこのムダなやり取りを余儀なくされることが決まった。その節目が2020年7月という月なのだ。

 レジ袋有料化の2つの未来シナリオ

今はまだ、どの店舗も手探り状態だ。だが、どのお店もビジネスとしてやっているのだから、いずれは店員さんというリソースをレジ袋の対応に消費させない道を模索していくだろう。その未来を2つ予想してみたい。

1つはバイオマス対応のレジ袋を採用すること。店舗側にはコスト高になるデメリットは有るが、お客側にはレジ袋は無料になるので、6月までの平和な世界に戻れる。

それでも一部の残念なクレーマーが「おい!しれっと勝手にレジ袋入れて課金してんじゃねえぞ!」と勘違いしてキレるケースが発生するだろう。その手の輩に「当店はバイオマス対応のレジ袋にて、無料配布しております」と看板を出しても彼らは文字が読めない。店内放送も聞けない。そのため、完全な対応とはならないものの、それでも9割以上の普通のお客さんにはこれでOK。レジ袋における対応リソース消費を解決できるだろう。

すでにこの方法を採用しているスーパーもある(編集部撮影)

そしてもう1つはレジ袋をレジ前の棚において、お客に自分で取らせるという方法だ。個人的にはコレを採用して欲しい。レジ袋は通常、お客の手に届かない場所に置かれているので、サイズを聞かれても「小でいけるかな?それとも大じゃないと入らない?」と判断が難しい。オレの場合はサイズの把握にマインドシェアを取られるのが嫌だから、常に「レジ袋(大)」を選択する重課金ユーザーだが。

レジ袋はレジ前に置いてくれたら良いと思う。スーパー関係者じゃないから、オレが知らないだけで、預かりしれぬリスクはあるかもしれない。なので採用可否は知らない。でも、もしも差し支えないならぜひやってほしい。

 まとめ

お金は失っても稼ぎ直せばいいが、時間は失うともう二度と戻ってこない。そして自分の落ち度が原因で時間を失うのは納得感がある。改善をすることで次回から再発防止策を打てるからだ。

けど、このレジ袋有料化は強制的に時間を奪いに来た。この悪法には個人でできる対応方法が今のところ存在しない。レジ袋の法改正に向けて立候補するほどでもない。しばらくは混乱が続くだろうが、店舗側がバイオマス対応のレジ袋採用か、レジ袋を客に取らせる方法を選んでくれるのを待ちたい。

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。