緊急寄稿2:安楽死事件 〜 この世は「二者択一」ではありません

恩田 聖敬

「私と仕事どっちが大事なの!?」

「もし自分か奥さんどっちかしか助からないとしたらどうする?」

「孤独な大金持ちと温かい家族のいる貧乏どっちが良い?」

いわゆる究極の選択という問いですが、こんなものどちらかを選ぶ必要はないのです。以下私の回答です。

「私と仕事どっちが大事なの!?」
→もちろんどっちも大事(^ ^)

「もし自分か奥さんどっちかしか助からないとしたらどうする?」
→どちらも助かる方法を考えます

「孤独な大金持ちと温かい家族のいる貧乏どっちが良い?」
→温かい家族のいる中流階級が良いです

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このように決して選択肢は2つではありません。では次の問い。

『生き地獄を味わいながら生き続けるか、生き地獄から解放されるために死ぬか?』

この問いに対して二者択一だとALSという病気は世間から思い込まれています。そしてALSに対してあまりにも知識が偏った医療従事者が多いため、患者も家族もあたかも選択肢は2つしかないと思い込まされます。

  • 家族が24時間介護しなきゃいけない
  • 一生部屋の天井を見て過ごすことになる
  • 多額の税金を使って生きることになる

これだけ聞いたら

→私死んだ方が良いのかな?と思って当然です。

私から見たら、自殺へ誘導する情報操作です。

私は2つの選択肢は選ばず、『生き地獄から解放されて生き続ける』選択肢を選び、今現在も常に改善を模索しています。

  • 完全他人介護実現
  • 会社設立→仕事を通じて社会参画、納税
  • ALS協会岐阜県支部長として良くも悪くもALSの事実を発信
    →どんな選択をするのかは患者と家族が決めること、意思決定のもととなる、よりフラットな情報を少しでも多く提供することが私の務め
  • ヘルパーさん不足解消のため学生ヘルパー育成

手前味噌ですがALSでも、人工呼吸器をつけても、私はこのように充実した生活を送っています。そして全国には、私以上にアクティブな患者さんが何人もいらっしゃいます。

今回の事件の患者さんが何を思って「死ぬ」という選択肢を選んだのかはご本人しかわかりません。しかし彼女の周りに一人でも「第3の選択肢」を本気で提案する人が居れば、結末は変わったかもしれません。

我々は少数のALSの本質を理解する医師や介護者の熱意によって普通に生きています。感謝にたえません。この少数が多数派になれば、ALSに対する二者択一の考え方は自然と消えると思います。


この記事は、株式会社まんまる笑店代表取締役社長、恩田聖敬氏(岐阜フットボールクラブ元社長)のブログ「ALSと共に生きる恩田聖敬のブログ」2020年7月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。