「1万人の50代が後悔したこと1位」から学べる教訓は「時間の大切さ」

黒坂岳央(くろさか たけを)です。
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写真AC:編集部

プレジデントの記事が話題になっている。1万人の50代に人生で後悔したことを調査した結果、その1位は「仕事に定年はあるけど、人生には定年がないことに気づけなかった」というらしい。

定年後の人生設計は、定年前から備えないと意味がない。時計の針は誰にも戻すことはできない。オレは50代じゃないけど、この記事を読んで思うところを語っていきたい。

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 定年後も人生は続く

メチャ当たり前のことだけど、定年後も人生は続いていく。男性は仕事に生きる人が多く、家庭よりパブリックを優先する人も少なくない。そのスタイルのまま定年に突入すると、後悔するというのだ。オレはそのことを、精神科医の和田秀樹氏の書籍「人は「感情」から老化する」で紹介されていたエピソードで理解したつもりだ。

同氏の著書によると、夫は定年まで頑張って勤め上げた。彼はこれまで仕事人生だったことに負い目を感じており、定年後は妻との時間を取り戻そうと、一緒に楽しめる活動を模索していることをウッキウキで妻に話した。すると妻は「何いってんの?これまで散々家庭をないがしろにしていたのに。こっちはもう充実しているんだから。あなたはあなたで自分の人生をどうぞ」と突き放し、夫が愕然とするという話だ。

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男性は仕事の現役時代は、定年後のことを見ない人も多い。それだけ日々の仕事に忙殺されているということであり、目の前の仕事にコミットしているということだ。同じ男としてそれは分かる。けど、定年後も人生が続くことを忘れてしまうと、いざその日を迎えると「こんなはずじゃなかった」となるのもまた事実だろう。妻に突き放され、虚をつかれる夫にならないためにも、定年後の人生設計には現役時代からの備えが必要だと感じる。

 定年後の人生設計を立てる

「定年後の人生設計がなくて後悔する」という。「なら、シンプルに計画立てればいいんじゃね?」という話になる。

具体的に何をするべきか?「定年後からやっても間に合わないこと」を始めればいいと思う。たとえば、定年後に勤め先を退職した後に、家に長くいることになる。その時に何をしたいか?妻とはうまく関係を維持できるか?などだろう。あとは老後に経済的に不安を抱えないだけのお金の準備などだ。こうしたことは、定年の翌日から慌てて準備をするのではなく、あらかじめ計画性を持って用意しておくことが賢明だと思う。

たとえば熟年離婚になる理由の上位に「夫と一緒の空間に長くいるのがストレス」というものがあるらしい。それなら、会社員時代と同じくらいに、お互いの距離感を保つための工夫なんかも必要になると思う。たとえば会社員時代のスキルを活かして定年後も働くなどだろう。フリーアドレスのオフィスを借り、フリーで仕事をすればいい。定年後に「実質出社」の仕組みを持てば、良いか悪いかは別にして妻ともこれまでの保つこともできるだろう。「定年」をリセットして、これまでの現状を維持することができる。収入も得られるから、一石二鳥だ。

実際、オレの経営するフルーツギフトの会社には、「定年後も働きたい。お金もほしいけど、家に居づらい」というアルバイト男性もいる。定年後に働く、という人はお金もさることながら「家に居づらい」という理由も少なくないとオレは思ってる。

 お金より時間の後悔が大きい

人はお金より時間に後悔する生き物だ。今回のプレジデント記事の後悔したこと1位も、備えがなかったといいつつも、実質的に「時間」に後悔している。そしてお金と時間の両方を失った時には、お金より時間の喪失に後悔するものだろう。

オレの知人に熱烈な声優オタクで、10代の頃からずっとアイドル声優を追っかけていた男がいた。彼は10代、20代の若い時代をすべてといっても過言ではないレベルにその声優に注ぎ込み、ある時に突然冷めた。その瞬間、これまで莫大につぎ込んだCDやグッズなどの巨費よりも、もう二度と戻ってこない青春の時間を失ったことを後悔したと語った。

昔と違って、これからは人生100年時代だ。50代といっても、まだ人生の折り返し地点に過ぎない。そこから連綿と続く長い人生を悔いなくどう生きるか?定年前からしっかり考えておいたほうが良さそうだと感じる記事だった。

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。