コロナ新規感染者数を減らすという「手段」を目標化してはいけない

内藤 忍

emmanma/写真AC

資産運用の世界で、私がいつも申し上げている事は、手段を目標化してはいけないということです。

資産運用の目的は、自分に必要なお金を手に入れることです。そのためには、まず自分の人生のミッションとビジョンを設定すること。そして、それを実現するために必要なお金を考えるという手順です。

目標となる資産を手に入れるための手段が資産運用です。

ところが、資産を増やすということが目標化してしまう人が多いのです。必要のない資産を手に入れようと、とにかく闇雲にお金を増やすことに邁進してしまう。

お金を増やすという手段が、いつしか目標になってしまったというわけです。

これと同じことが、新型コロナウィルス対策にも見られるのではないでしょうか。

新型コロナウィルス対策の目標は、感染による死者を減らすこと。そして、重症者数を減らすことにより、医療施設への負荷を低下させることです。

そのための手段の1つが、新規感染者数を減らすことです。

ところが、新規感染者数を減らすという手段がいつしか目標化してしまい、毎日発表される新規感染者数の増減に、一喜一憂するようになっています。

そもそもの目標は、新型コロナウィルスで亡くなった人を抑え、そして重症者が医療施設を逼迫しないようにコントロールすることではないでしょうか。

新規感染者数が増えるのは、検査数が増えれば当たり前のことです。そもそも、PCR検査の陽性であっても、無症状だったり、感染していない人がかなり含まれているとも聞きます。

目標を明確にして、それが今どのような状態なのかを多くの人に知らしめる。そして、経済のダメージと、感染防止策のあり方を総合的に判断することが、政府の役割ではないかと思います。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年8月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。