「アベ、帰れ」から1年…あすの原爆忌75年は静寂を取り戻せるか?

椋木 太一

筆者撮影

こんにちは、広島市議会議員(安佐南区、自由民主党)・むくぎ太一(椋木太一)です。

広島は8月6日に原爆投下から75年という節目を迎えます。

今年も日本国内外の皆様が原爆の犠牲となられた方々を慰霊されると思います。国際平和文化都市を標榜する広島市の市議会議員として、恒久平和を願う皆様のお気持ちに心より感謝いたします。

私は昨年、広島市議会議員に初めて選出され、「広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式」(平和記念式典)に参列させていただきました。そこで、左派デモ団体による騒音問題に直面しました。松井一実・広島市長が平和宣言を読み上げている最中から拡声器で何か叫んでいる声が聞こえ、安倍晋三総理のあいさつの時には、「アベ帰れ」「アベを許すな」と聞こえる有様でした。(昨年の様子は、「またも破られた静寂:原爆の犠牲者を冒とくする『アベ、帰れ』」をご参照ください)

この様子に、平和記念式典が静謐な慰霊の場とは言い難いものに変質していることに愕然とし、憤りを覚えました。また、祖母が被爆者の被爆3世として、祖母や犠牲者の方々に顔向けできないという忸怩たる思いでいっぱいとなりました。

昨年の平和式典で挨拶する安倍首相(官邸サイトより)

そしてこの日から、平和記念式典に静謐な環境を取り戻すため、市議会の一般質問で市の姿勢を問うたり、話し合いを重ねたりしてきました。広島市も手を拱いていたわけではなく、「公共の福祉を損ないかねない」(松井市長)として、静謐な環境を取り戻すべく、条例制定も視野に入れて取り組んできました。

市当局のこうした動きは、市民や国民の多くの皆様の思いを受けたものです。広島市が昨年の平和記念式典の参列者らを対象に騒音に関するアンケートを実施したところ、7割が平和記念式典を厳粛な環境で行ってほしいと回答しています。つまり、左派デモ団体の騒音が迷惑だと感じているということです。

また、市民の代表である広島市議会は、式典が厳粛な中で挙行されるよう協力を求める決議をしています。これらは、平和記念式典で左派デモ団体が騒音を出すことに「NO」を突き付けているという証左なのです。

今年3月下旬、広島市と左派デモ団体は、今年の平和記念式典においては、拡声器から10メートル離れた地点で「85デシベル」を超えない音量で行うという取り決めをしました。

デモは憲法上、「表現の自由」として保障されていますが、この取り決めによって、その自由が無制限であるというお墨付きを与えたわけではありませんし、式典参列者や慰霊に訪れたご遺族らへの配慮は当然求められます。広島市民、国民の皆様の多くがデモの騒音を肯定的に捉えていなければなおさらです。

この取り決めはあくまで、広島市側の最大限の「譲歩」であり、「最後通牒」なのです。取り決めが反故にされたら、条例制定など実効性を伴う手立てを講ずるフェーズに入るしかありません。広島市民、日本国民は心の底から、「静謐な環境」を求めているのですから。

最後になりましたが、今年の平和記念式典は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、参列者数を例年の1割程度に抑えて執り行われます。当日午前5時から同9時まで平和記念公園への入場規制を行い、「3密」を避けます。

多くの皆様が当地を訪れ、原爆でお亡くなりになられた方々を慰霊し、恒久平和を祈願することが、「8月6日」の本来あるべき形だと思います。一方で、広島市民ならびに広島を訪れていただいた皆様の生命・身体をお守りすることも重要であることから、式典の規模を縮小し入場規制をしたことは、苦渋の選択だとご理解いただけたらと思います。