8/10に「3秒聴けば誰でもわかる名曲ベスト100」(テレビ東京)という番組があり、懐かしさで私もTVをつけっぱなしにしていたんですね。昭和の歌謡曲というのヒット曲は誰もが知っている、誰もが口ずさめるという特徴があります。
私も、どの曲も始まればそらで歌えるものばかりでしたが、改めて昭和の歌謡曲の歌詞に仰天してしまいました。
昭和というのはなんて男尊女卑な時代で、しかもそれを何曲も何度も誰も疑問も持たず放映されていたなんて!
私は現在55歳ですが、こういう価値観を植え付けられて育ってきたんだなぁと、我ながら驚いてしまいました。
いくつか例をあげるとですね、まずは1973~4年に大ヒットした「なみだの操」。この曲は1974年の年間オリコンチャート第1位に輝いています。
あなたの決してお邪魔はしないから、おそばに置いて欲しいのよ。
お別れするより死にたいわ、女だから
「いやいや、男と分かれたぐらいで死んじゃいかん!」と全力で止めたくなりますが、なぜ女だからなのかは分かりません。ストーカー事件など思いつめた事件を起こすのは男性も多いと思いますが。しかも「邪魔はしないから、そばに置いて」って、そんな人生が面白いのか?と問いたいです。
次、同時代というかですね、驚いたことにこの「なみだの操」の前に、「おんなの道」という似たような感じの演歌が流行ったんです。で、この「おんなの道」1972年と1973年のオリコン第1位になっているんですね。すごい! ロングランの大ヒット曲ですよね。で、その歌詞
私がささげたその人に、あなただけよとすがって泣いた
うぶな私がいけないの、二度としないわ恋なんか
これが女の道ならば
というんですね。「ただ単に男見る目なかっただけだから、次いきなよ!」と、励ましたくなる曲。「すがって泣いたりすると余計ウザがられるだけだからさ、やめときな!」と私が親友ならきっとこうアドバイスするでしょう。
しかもまたしても「女」でくくられています。
そして極めつけは「恋の奴隷」。これはですね1969年にリリースされた曲ですが、当時5歳だった私も歌っていた記憶があり、確かCMかなんかにも起用されていたようなとにかく流行っていた曲なんですね。この歌詞がもうすごい!
だからいつもそばに置いてね邪魔しないから
悪い時はどうぞぶってね
あなた好みのあなた好みの女になりたい
ひぇ~! それDVやで! DV! あかん! あかん! そんな男から離れなあかんで~!!! と、思わず必死に説得にはいりたくなる曲です。
つまり昭和の時代というのは、
・男に逆らわず従順に従い
・どんなに理不尽であっても耐えしのぶことに酔い
・それが「女」というものですよとラベリングを貼る
今では考えられないこんな要素が大ヒットに繋がっていたんですよね。
昭和を生き、なんの疑問も抱かず、ヒット曲を口ずさんでいた自分自身に一番驚いています。「多様性」とか「自立」とか「平等」という言葉をあの頃の自分に教えてやりたいです。
今は誹謗中傷が行き過ぎてしまったところがありますが、SNSの発達も良いところありますよね。こんな風に一つの価値観で「女」とくくられ、それをいつでもどこでもあっちゃこっちゃで聞かされ、刷り込まれていく・・・という目にあわずに済みますもんね。
今なら、恐らくリリースできなかったか、しても大炎上するのではないでしょうか。昔は、一般人にそんな意見表明のやりようがないですもんね。
あの頃、フェミニズム運動をされていた方々は、この連続ヒット曲には胸をかきむしる思いがあったのではないでしょうか。市川房江先生あたりに聞いてみたかったです。
でも確かに我々世代って「男が守ってくれるもの幻想」ありましたよ。その価値観はバブルで一層強化されましたが、女性陣を支配しようとした一部男性陣の誤算は、金余りからもてはやされる女性が増え、どんどん強くなり、金や車、地位のない男など見向きもしない、いわゆる背・年収・学歴が高くなくちゃダメという「三高」の時代になったことですね。従順なんてバブル女子には程遠い考えです。
そしてバブルは崩壊し、日本は経済大国なんかではなくなり、今や「男だ女だなんて言ってられない!お互い協力しないと、生きてくので必死だよ。」という時代に突入してきたわけですよね。
私も昭和の歌謡曲は大好きですし、今でも70年代、80年代の曲はよく聞きますけど、音楽性はもう若者についていけなくとも、価値観だけはバージョンアップしていきたいと思います。
それにしても、この曲を聞いて青春を過ごし、今でもカラオケで歌ってるようなおじ様方が、価値観を上書きしていることを切に願います。
この女性像を理想として、家族や職場の女性たちを困らせていませんように!