2つの軸で分析:立憲民主党と国民民主党はなぜ政策一致できなかったのか

原 英史

立憲民主党、国民民主党の両サイトより:編集部

立憲民主党と国民民主党はなぜ政策一致できなかったのか。今後、合流・分党はどこに向かうのか。

読み解くには政界全体の見取り図が必要だ。以下の2つの軸で整理してみた。

  • X軸:「現実」志向(実行や提案に軸足)←→「理想」志向(悪くいえば、批判ばかり)
  • Y軸:「国民一般」へのアピール重視 ←→「支持団体」重視

「保守」「リベラル」の区分は敢えて用いていない。これは、概念そのものが政治信条次第で、混乱しやすいからだ(例えば、立憲民主党は「リベラル」と捉えられがちだが、枝野代表は自らを「保守」と称する)。

立憲民主党と国民民主党は、X(現実-理想)でのポジションの違いは明らかだった。前者は「政権批判」に力を注ぐ傾向が強く、後者は(党所属議員すべてかどうかは別として)、「提案型野党」としての活動を重んじてきた。

今回の合流協議で憲法につき政策一致できなかったとされるが、従来から立憲民主は「安倍内閣での憲法改正には反対」と批判姿勢を前面に出し、国民民主は積極的に論議する方針をとってきた。これは政策各論というより、基本的なポジションの問題と捉えるべきだろう。

合流協議ではもう一つ、消費税減税も一致に至らなかったとされる。

こちらは、おそらくY軸(国民一般-支持団体)の問題だ。経済が大きく落ち込むこの局面では、大規模な財政支出や減税は標準的なセオリーで、方向性そのものは争点になりづらい。その中で差異が生じるのは、特定業界や特定集団向けの補助金や給付を重んじるか、消費税減税のように国民が広く利益を受ける施策を重んじるかだ。

連合が消費税増税に賛成の立場をとってきた事情もある。産業界も同様だが、社会保障財源を賄ううえで、労使折半の保険料のアップより、消費税のほうが好都合との面もあった。

今回、立憲民主がなぜ消費税減税を拒んだのか、連合の意向に配慮したのかは不明だ。だが、ともかく減税賛成の国民民主のほうが、より「国民一般」へのアピールを重視していることは明らかだろう。

こうしてみると、立憲民主と国民民主は対極のポジションだ。憲法と消費税はそれぞれ、X軸とY軸での基本姿勢の違いを表彰すると考えられる。

合流推進派は「大きな塊」を目指しているという。

構図としては、シナリオAのような姿だ。与党に対し、批判勢力として「大きな塊」を作り、共産党との連携も視野に入れる。これは、特に小選挙区を念頭においた選挙戦術としては、至極合理的なのだと思う。

だが、重大な疑問は、「現実」志向でない第二党に、政権を委ねてみようと有権者が思うのかどうかだ。一時的には議席数を増やすかもしれないが、このポジションにいる限り最終的には、「巨大な与党vs少数の批判勢力」の構図に収まっていくのでなかろうか。

もうひとつ、考えられるのがシナリオBだ。「現実」志向の枠の中に、もう一つの塊を作る。「支持団体」重視に偏りがちな与党に対し、「国民一般」重視を鮮明にして対峙する。

玉木氏らが目指すのは、おそらくこちらだろう。維新はすでに、このポジションで勢力拡大を図りつつある(連携するのか競合するのかはわからないが)。実はこれは、旧民主党の創設当初のポジションでもあった。

民主主義には、政権交代の可能性が不可欠だと思う。この観点で、政策の是非や好き嫌いはすべて抜きにして、私はシナリオBに期待する。

(本稿は、オンラインサロン「情報検証研究所」での岸博幸さんとの議論も踏まえ執筆しました。サロンでの議論を深めていく予定です。)