ここ数日間、安倍首相8月24日辞任説がネットと永田町を駆け巡っていた。元朝日新聞記者でいろんな意味で有名人であり、著書もある佐藤章さんという人の以下のTwitterが起点となって、さらに脚色されて流布されていたようだ。
優れた著書もあり、朝日新聞社のネット・メディア「論座」でも健筆を振るわれている方だが、書かれているテーマの極めて大きい部分が小沢一郎氏を持ち上げるスポークスマン・チックな内容であって、政治的立場ははっきりしている。
また、最近は「石破茂にとことん聞いた」という連続インタビューも載せている人だ(石破茂氏ももう少しインタビューを受ける相手を慎重に選ばれた方がいいと誰しもが思っている)。
そういう方が動かれているのだから、国民民主党分党騒ぎのなかで、立憲民主党との合流派に有利なように動かれて安倍首相の退陣説を流されたと推察することは、下種の勘繰り(げすのかんぐり)でも何でもあるまい。
自民党の代議士も、朝日新聞の元花形記者がそこまで断定的に書くのだからといって動揺し、騒ぎは大きくなった。また、これを元首相とか大物政治家が噂を聞いたとかいって拡散したといった情報も流れている。
しかし、首相の健康状態については、近い時点で直接に話をした人の印象は、それほど深刻なものではないと一致していた。
首相は難病の持病があるし、これまでもそれと上手に付き合いながら激務をこなして来た。少し疲れがたまったこともあって持病も辛そうだが、仕事ができないようなことではないので、少し楽にしたらということで一致している。
首相が17歳のときに発症した潰瘍性大腸炎を持病としてもっていることは、Wikipediaにすら詳しく載っており、第1次内閣はインド訪問などの無理がたたってこれが悪化し、辞任に追い込まれたことは周知の事実である。
しかし、第2次内閣以降は新しい薬の登場などでこれをコントロールすることに成功していた。今回はコロナ対策などでの疲労が蓄積したこともあって少し症状が悪化しているのかもしれないし、その結果、やや元気がなく、日程もセーブしているようだが、入院などが必要なわけではなさそうだ。
夏休みでもあり、慶応病院を三度訪れ、詳しく検査をしていることも自然なことだ。ただ、通常の執務は可能だといっても、今後の激務に備えて、一度夏休みをとるとか入院するとかしてゆっくり休んだらと勧める人は多い。首相は無理をしなければ外遊などもないので、働きながら回復させられると判断しているというのが、最大公約数的な見通しだろう。
ただ、9月には内閣改造を控えているし、コロナ対策で臨時国会という声もある。また、首相が本調子でないと、解散という選択肢はとれない。
11月3日のアメリカ大統領選挙が終わったあたりからは、世界的な外交が再開される。このときに、安倍首相が外遊がきつい状況だと、日本も世界もジレンマに陥る。
つまり、病気の首相では困るのだが、一方で、トランプ再選にせよ、バイデン当選にせよ、外交の転換点にあって、日米関係についてはもちろん、中国をはじめ世界外交においても世界のリーダー的存在である安倍首相なくしては日本だけでなく世界も困ってしまうのである。
そういう意味でも、国民もマスコミも、必要ならということではあるが、首相に一か月くらい休んでもいいし、臨時代理を立ててもいいから病気を治せ、というべきではなかろうか。