25年間も公有地不法占拠!あなたの街にもあるかも

芦田 祐介

久御山町役場(Bakkai/Wikipedia)

京都府久御山町で町有地が25年間にもわたって「不法占拠」されていたことを6月定例会の一般質問で明らかにした。不法占拠の開始から解消されるまでの経緯は次のとおりである。

1961年の第二室戸台風により久御山町内では全壊家屋81戸という甚大な被害が発生。そのため役場近くの町有地に応急仮設住宅が建設され、後にこの土地を不法占拠する住民A氏の親族が入居。応急仮設住宅はあくまでも被災者を一時的に受け入れる簡易な住宅である。年月の経過とともに他の入居者が次々と退去していくなか、A氏の親族はこの土地に居座り続けることとなった。

1994年、建設業者であるA氏の親族が町有地内で重機を使用した無断作業をおこなっていることを確認。久御山町は作業中止と放置物の撤去を求める。ここが不法占拠開始の起点となる。

1995年、町有地内での構築物の設置を確認。

1998年、仮設住宅が取り壊された跡地にA氏の親族が無断で鉄骨造の建物を建築している事実を確認。久御山町は、建物の撤去と土地使用中止を求める通知書を交付したもののA氏の親族はこれを無視して建物を完成させてしまった。

それ以降も久御山町は、A氏の親族が町有地を不法占拠していることは明らかとして、建物の撤去と土地の明け渡しを求めた。しかしながら、A氏の親族は町有地の払下げを要望してきて、土地の明け渡しに応じず、不法占拠は続いたのである。

転機となったのが2016年である。A氏の親族が死去したことによってA氏らが相続人となった。そのため久御山町はA氏と土地の明け渡し交渉を開始。久御山町はこれまでの土地明け渡し方針を転換し、A氏に土地を払い下げることで解決の道筋を見出しのである。

2019年7月、ついに久御山町とA氏との間で土地の払下げ契約書が締結され、8月には売買代金の支払いや周辺不法占拠部分の明け渡しなどが完了したためA氏は土地の所有権を取得した。これによって1994年から始まった長きにわたる町有地の不法占拠問題は終結したことになる。不法占拠された期間は25年間とあまりにも異常である。

※画像はイメージです。(iio/写真AC)

久御山町は、なぜ25年間にもわたって不法占拠を許してきたのか。まず、初期対応を誤っている。1998年に建物を建築している事実を確認したときに、建物の撤去と土地使用中止を求める通知書を交付したというが、この通知書には何ら強制力がない。建物を完成させてしまえば容易に立ち退かないことは予想できたはずである。このとき裁判所に建築工事差し止めの仮処分を申請すれば、ここまで長きにわたる不法占拠にはならなかったはずである。

A氏の親族が建物を完成させた後も、久御山町は任意の交渉を続けるのみで何らの法的措置を取っていない。土地の明け渡し訴訟を裁判所に提起するべきであった。判決までいかなくとも訴訟の遂行と並行して和解の交渉をすれば話しがまとまったかもしれない。

そもそも町有地を不法占拠するというのはあまりに常軌を逸している。そのような人物と任意の交渉のみで解決しようとすること事態が無理筋といえる。久御山町の甘い対応は強く非難されるべきである。

A氏らによって町有地を不法占拠されていなければ、たとえば土地を貸すことによって賃料を得られた。また早期に、競争入札により適正な値段で払い下げていたのであれば、その間に固定資産税を徴収することができた。久御山町が不法占拠によって被った経済的損失は甚大であり、その責任は重い。

A氏に土地が払い下げられた後、私は、土地が第三者に転売されているとの噂を聞いた。

そこで法務局に行って土地の登記事項証明書を取得してみた。すると驚くべきことがわかった。2019年8月21日に土地の所有権を取得したA氏は、そのわずか8日後となる8月29日に第三者に土地を転売していたのである。

筆者が取得した不動産登記(※個人情報部分は加工)

もともとA氏らが町有地を不法占拠していたことに周辺住民は怒り心頭であった。さらに不法占拠していたA氏が土地を第三者に直ちに転売していることから利益を得たのではないかと疑念が生じ周辺住民の怒りは頂点に達した。

情報公開請求によって入手した土地の払い下げ契約書を見ると転売禁止特約は設けられていなかった。転売禁止特約というのは例えば「5年間は本件土地を第三者に転売することはできない。これに違反した場合は久御山町に違約金として300万円を支払うこととする」といった条項である。こうした条項がない以上は本件転売は適法といえる。

これまで町有地を不法占拠していたA氏が土地を第三者に転売して利益を得たのであれば著しく正義に反する。不法占拠者であったA氏が転売によって利益を得ないように一定期間の転売禁止特約を設けるべきであった。住民感情は厳しいものがあり、一般質問には多くの反響をいただいた。とりわけ周辺住民は役場に対して不信感を募らせている。

こうした公有地の不法占拠事案は他の自治体でもしばしば見られるものである。土地所有者である自治体自身が長年にわたって不法占拠に気づかなかったということも珍しくない。

今回は私の町の出来事を紹介したが、決して人ごとではない。皆さんがお住まいの自治体でも不法占拠事案があるかもしれないと認識しておいたほうがよい。

芦田 祐介 京都府久御山町議会議員(地域政党京都久御山党)
1983年生まれ、同町議会最年少議員