JAL、ANA、みずほの「雇用対策の違い」

今まで「勝ち組」と言われてきた大企業サラリーマンの雇用環境が急激に悪化しています。

ANA(全日空)は、冬のボーナス支給を凍結し、正社員の年収が3割超下がることになると報じられています。また、希望退職を募集し、人員削減を始めるようです。

同じ航空会社でもJAL(日本航空)はANAとは対照的に、客室乗務員の配置転換によって雇用に手をつけず収益改善を目指しています。賃金カットや人員削減ではなく、約1000人の客室乗務員を地方の観光振興支援業務を搭乗業務と兼任させるそうです。

長期的に航空需要が回復しなければ、JALの方法は裏目に出てしまいますが、従業員のモチベーションは、給与カットよりこちらの方が維持できそうです。

金融業界では、低金利の長期化で収益が悪化しているみずほフィナンシャルグループが、新しい雇用対策を打ちだしました。通常の勤務形態である週休2日に加え、週休3日、週休4日といった雇用形態を作り、人員削減を先延ばしにしながら人件費の削減を実現しようとしています。「ワークシェアリング」のような仕組みです。

3社3様の雇用対策ですが、従業員のモチベーションの維持と言う観点からは、どの方法が一番良いのでしょうか?

ANAの給与と人員の削減は、従業員のモチベーションを低下させ、優秀な人材の流出をもたらすリスクがあります。

JALの配置転換による雇用の維持は、日本的な雇用維持です。短期なら良い対策かもしれませんが、恒久化すればこれも従業員のモチベーションを下げることになるでしょう。

そして、みずほのようなワークシェアリング型の雇用調整は、副業などを認めれば、良い効果をもたらすかもしれません。しかし、単に労働時間を減少させるだけなら、人員削減よりもマイナスの影響が大きいでしょう。

雇用対策の違いはあれど、共通する事実は、今や会社の収入だけに頼るライフスタイルは、リスクが高い。そして、その中でも大手企業に勤務している事は、安定ではなく、さらに高リスクということです。なぜなら、肥大化、硬直化した組織が、変化への対応を遅らせてしまうデメリットがあるからです。

キャリアアップと同じ位、マネーリテラシーを高めていくしか、この変化に対応することはできません。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年10月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。