正規・非正規の働き方についての判決が13日に最高裁で2件、昨日15日に3件の判決が出ました。
13日の最高裁の判決では、非正規労働者にボーナスや退職金がなかったことについて、違法かどうかが争われました。結果は、今回のケースについては会社側の対応を不合理とは言えない、すなわち合理的な方法だったから違法ではないという判決です。ただし、ボーナスや退職金が出ないことが不合理だと認められるケースもあるということも付け加えられ、いわばそれぞれのケースによって判断が異なるということです。
これらの判決は、非正規雇用で働いている労働者だけでなく、中小企業の経営者の人たちも注目したのではないでしょうか。ただし、今回の判決で一方的な結論付けをしない方がいいと私は思います。なぜなら、判決はケースバイケースですし、また昔といえば昔の法律の雇用関係ということを前提とした今回の判決です。
思い出してください安倍政権で働き方改革という議論がありましたよね。そこで法改正もあり、現在では労働者と雇用主の双方とも環境が変化しています。
非正規労働者がどんどん増えているので、今から7年前の平成25年にその待遇の改善のために労働契約法が改正をされました。
労働契約法
第二十条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
その労働契約法改正で、第20条にある正規雇用と非正規雇用の待遇における不合意な格差を設けることが禁止されました。ですから今回も、不合理かどうかというのが一つのキーワードでした。
例えばクレーム対応について正規雇用者はやるけれども非正規の人はしない、あるいは配置転換の有無などから、不合理ではない。逆に言えば、合理的な理由からボーナスや退職金が出ないということを認めたわけです。
その後、働き方改革でまた法改正があり今度は同一労働同一賃金という言葉も出てきましたよね。
同一労働同一賃金(別名: パートタイム・有期雇用労働法)
有期雇用労働法・労働者派遣法が施行され、不合理な待遇差解消が目的で、給与や賞与、手当、福利厚生などでの待遇差が禁じられる
これによって、例えば会社の業績が上がったことでボーナスを支給する場合は、全体の業績が上がることには正規も非正規も同じですから、この場合のボーナス支給は双方に出すことになったわけです。今年の春にこのBLOGでお伝えしましたが、大企業についてはすでにこの4月から「同一労働同一賃金」がスタートし、中小企業は来年の4月から施行されます。ですから大企業はまさに今、非正規雇用者にボーナスを出すときは、正規雇用者に対する割合としてどのぐらい出すのかなど、現在進行形で変化している最中なんです。
もともと日本の企業はメンバーシップ型と言われる雇用形態でした。どういうことかというと、新卒で一括採用し、様々な部署を経験しながら管理職になっていく、そして終身雇用制という雇用形態です。ところが日本全体の問題としてこの雇用形態に限界が来ています。例えば能力や技術があるという人は外国企業に行ってしまいます。なぜなら給料が最初からいいからです。
ですから、ジョブ型雇用と言われる仕事内容にたいして報酬を提示して採用する方法に、日本企業でもこれからは移行していかないと、国際的に人を取れなくなっているでしょう、要するに、働き方が多様化していくわけです。
ですから経営者の皆さん。今回の判決を聞いて、「正社員の人にだけボーナスと退職金を用意すればいいんだ。良かった」と思わないでください。
そもそも人を大事にしない会社は、これから先、生き残れませんよ。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年10月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。