学術会議以外にもあるのではないか?
学術会議騒動を通じて本来ならば行政に属し内閣の管理下にあるべき組織がなんらか理由で事実上「独立」状態になっている例が学術会議以外にもあるのではないかと思った方もいるのではないか。
その疑問は正しい。学術会議と同様に行政という観点から看過できない組織がある。それは弁護士会である。
登録と懲戒は立派な行政作用
よく知られているように弁護士会は強制加入団体であり、日本で弁護士になるためには弁護士会に登録しなければならないし、また弁護士に対する懲戒も弁護士会が行う。
「登録と懲戒の独占」が弁護士会を強制加入団体にたらしめる。
問題はこの登録と懲戒である。ある資格を取得し、それを登録しないと業務ができない、また、その業務に従事する者に対して懲戒処分を科すという行為は立派な行政作用である。
これについて1987年に国会でも審議されたようである。行政権を掌る内閣の認識を確認するためにも引用しよう。
説明員(清水湛君)
登録を受けなければ弁護士の仕事ができないということでございまするが、例えば医者が厚生省に登録をしないと医師の業務は行うことができない、こういうようなことと対比で考えますと、登録というのは一種の行政作用である、こういうふうに考えられるわけでございます。そういうことになりますと、例えば弁護士会の現在の登録事務というのは一種の行政作用であるということに相なろうかと思います。
(太字筆者、清水湛氏は当時の法務大臣官房司法法制調査部長)
内閣の説明員は明確に弁護士会の「登録事務というのは一種の行政作用である」と述べており、また、登録と懲戒はコインの裏表の関係だから、この答弁は弁護士の登録に限らず懲戒も行政作用であることを内閣が認識している証である。
ここ重要なのは行政作用たる登録と懲戒を弁護士会が独占することと日本国憲法第65条で規定された「行政権は、内閣に属する」との整合性である
弁護士会から日本国憲法を取り戻せ!
弁護士自治は重要であるが、だからといって日本国憲法第65条に規定された「行政権は、内閣に属する」に反することは許されない。
弁護士の登録と懲戒が行政作用である以上、弁護士会は行政権を掌る内閣を尊重しなければならない。
少なくとも内閣の主体的役割が期待される外交・安全保障・歴史認識問題(慰安婦問題等)について声明を出すことは厳に慎むべきである。
もっともとても慎むとは思えないから憲法に規定された「行政権は、内閣に属する」を根拠に内閣による弁護士会、特に日本弁護士連合会への関与を検討すべきだろう。
現在、弁護士会の「偏向」が度々指摘されるが、その一因として「弁護士自治」の名の下に弁護士会が外部からの関与を徹底的に拒絶していることが挙げられる。
内閣の関与は弁護士会の「偏向」の是正に資するだろう。
もちろん内閣が行政作用を持つ弁護士会に関与することは全くの護憲行動である。
「弁護士会から日本国憲法を取り戻す」行動といっても過言ではない。
菅首相は行政改革を重視しているが、「行政」を省庁に限るのではなく弁護士会も含めるべきである。