ATM統廃合は賛成だけど、預金通帳を何とかして欲しい

内藤 忍

三菱UFJ銀行と三井住友銀行がATMの共通利用を始めています。

銀行側のメリットとしては、重複する店舗のATMを廃止することができ、コスト削減につながります。このようなATMの相互解放による効率化によって繁華街にある金融機関の店舗は急激に減少していくことが予想されます。銀行や証券会社だらけの繁華街が変わっていくのは良いことです。

預金者にとっても、店舗が減っても、入出金や残高照会が相互にできるようになり、利便性はあまり変わらないように見えます。しかし、問題は通帳の記帳ができないことです。

銀行取引の最大の問題は「預金通帳」にあると思っています。

例えば、融資条件が良いので、不動産担保融資で借り入れをしている地銀がいくつかありますが、支店が自宅の近くにないので、通帳の記帳するだけでも、毎回遠出をしなければなりません。

ネットバンキングで取引をすれば良いのかもしれませんが、ネット開設手続きが煩雑で、ネットバンキングの使い勝手もとても悪く、法人の場合は、毎月の手数料がかかるデメリットもあります。

せっかくのネット取引なのに、セキュリティーを過剰にするあまり、使いにくく高コスト。ネット証券のような、使い勝手の良さがないのが残念です。

SMBC信託銀行、新生銀行、住信SBI銀行などは、預金通帳ではなく、証券会社の取引残高報告書のようなA4の預金の移動明細を毎月郵送で送ってくれます。これなら通帳記帳に行く必要がありません。

また、通貨別の残高が一覧表示されており、円だけではなく、外貨の金額も合算されています。通帳方式の銀行の場合、円の預金通帳、外貨の預金通帳というように、通帳がそれぞれ分かれていて、合算されていません。

取引残高報告書形式の方が、記帳の手間がなく、残高管理もしやすいので、通帳方式より利便性が高いと感じています。

今更メガバンクや地銀が、膨大なシステムコストをかけて通帳を廃止するのは難しいのかもしれません。しかし、預金通帳のまま、ATMの統廃合を進めていくと、記帳ができないという預金者の不満が徐々に高まっていくのではないかと危惧しています。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年11月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。