菅政権も安定・強力で及第点?

安倍政権、覚えてます?
なんだか遠くへ言ってしまった気がします。政権の途中では悪しざまに言われたこともあったけれど、終わってみたら甘みが残るからかもしれません。
だって、安倍首相が辞任を表明した直後、7年8か月の政権を「評価する」が71%を占めたそうじゃないですか。

日経でも読売でもなく、朝日の世論調査です。71点というのは、優でなくても十分な及第点。
なんやかんや言っていい時代だった、ということでしょう。
ぼくも71点に同意します。個人として振り返り、評価してみます。

「安倍政権を「評価」71% コロナ巡る指導力、評価二分 朝日新聞社世論調査」

安倍政権はアベノミクスでした。
1.金融は異次元緩和。
2.財政は消費税アップ。
3.成長戦略は構造改革。
1と2は円高を是正し株価は上昇。失業率も下がりました。評価できます。
しかし成長戦略は、働き方改革も地方創生も弱く、科学技術イノベーションもDXも合格とは言えません。

金融は日銀、財政は財務省が主役。ここは仕事をしました。
成長戦略は官邸-経産省です。
ただしこれは金融・財政のような短期アクションではなく、長期にわたる行政を要します。
1989年に1位だった世界競争力が34位に落ちたのは、平成の30年間負け続けた結果であり、安倍政権に責を問うのは酷です。

平成30年の敗北は、昭和の大成功がネックとなり、世界のDXに遅れたことが主因と考えます。
政権のせいではなく、世代のせいです。
国や自治体のデジタル化も遠隔教育も世界最低水準という公的分野のダメさだけでなく、在宅勤務が可能な人の割合も最低水準という民間のダメさでもあります。

「没落日本がコロナ禍後に目指す方向は」

この沈没の穴をふさいで反転するには、戦争や恐慌クラスのショックが必要だと思っていました。でも日本はリーマンショックでも変わらなかった。文明、じゃムリなのか。
コロナという地球規模の疫病がそのきっかけになるとは予測していませんでした。
安倍政権は、アベノミクスを強調しすぎました。
官邸プロモーションの失敗だと思います。
安倍政権は、もっと大きな成果を挙げたのに。
それは、主要国で唯一、安定・強力な内閣であり続けた、ということです。

安保では、集団安全保障の法制やNSCの設置(よしもと総合芸能学院ではない)などを通じ、改憲を実質済ませてしまいました。
天皇の退位から改元を混乱なくなしとげ、祝賀ムードの中で令和に移行しました。
TPPやEU経済連携協定などを通じ、世界の信頼も得ました。

米トランプ、英キャメロン、メイ、ジョンソン、仏マクロン。独メルケルさんも中国の習さんも内憂外患でみなガタガタしています。主要国で日本だけが揺らがずにいました。
コロナの対応でも、ロックダウンせずに死者数を抑え、安全で安定であることを示しています。
米欧ア3極をとりもてるポジション。史上初でしょう。

菅内閣は、これを継承してもらいましょう。
1.内政 DXを全力で進める。構造改革。
2.外交 3極のハブとなる。安定強力。
単純かつ明白な路線です。
ぼくは開かれた政治や優しい政治より、強い政治を期待します。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2020年12月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。