菅首相、このままでは乗り切れない2021年の難局

私はカナダのある雑誌に毎月コラムを書かせて頂いています。その年初号では「びっくり大予想」を長年お届けしています。先日、その原稿を入稿したのですが、その10大予想の一つは「菅総理、継投せず」。しかも解散もできず、ずるずると秋まで引っ張ると書き込んでいます。

(首相官邸HPから:編集部)

(首相官邸HPから:編集部)

解散もできないと読んだ理由はそれぐらい、内閣の足腰がふらつくと予想しているからです。コロナがいつ収束するのか、全く見込みは立ちませんが、年明け早々からオリンピック開催について本格的な議論とその準備が求められると思います。特に団体競技などはかなり早い時期から日本入りし、現地での調整をします。

このオリンピック準備に於いてまず、国内の受け入れですが、私は観客よりも、選手とその関係者の受け入れの方が相当苦戦するとみています。一部では外国人由来のウィルス持ち込みという風評も立つ中、受け入れ先を含め、世論のコンセンサスをどうとるか困難な作業となるでしょう。

次いで海外向けの発信力です。IOCが主体ということではなく、菅首相が日本の開催は安全安心だというメッセージをきちんと伝えることが大切なのですが、本当に論理的説得力と心がこもった招聘ができるのか疑問なのです。海外ではコロナ対策で欧米のクリスマスはなくなっています。トロントでも厳しいロックダウンとなり、いったい何時になれば霧が晴れるのか、まったく先行き不透明になっています。ワクチンは先進国ですら一般の人に出回るのは春頃。オリンピックは206の国と地域が参加するのです。参加国は先進国だけではないのです。ワクチンはそこまできちんと浸透するのでしょうか?

とすれば私はオリンピック開催議論は国内だけではなく、海外世論も巻き込んだ厳しい判断になるとみています。

次に菅首相は9月の就任以来、国内問題、特にそのほとんどをコロナ対策で翻弄されてきました。一部外国首脳とは会談や電話会議をやっていますが、外交デビューと言える状況にはありません。ところがアメリカで新大統領が就任すればその外交政策を読み込み、日米関係をどう構築するかは首相の器量によるところが大きくなります。中国は日本へ引き続き秋波をだしてくるでしょう。それ以外にやらねばならない外交は無数にあります。

高齢者の医療費負担問題。その負担増についてはやむを得ないと思いますが、決め方があまりにもふがいなかった気がします。菅-山口氏の会食会談ですぐに決まったということですから答えありきの形式的で儀礼的なものだったのですが、それが週刊誌ネタ的に扱われていることに首相の品位が落ちているように感じるのです。

ニコニコ動画での菅首相の「ガースー」に様々な意見があるようです。誰の入れ知恵かご本人がそう思ってやったのか知りませんが、菅首相のキャラクターは「ガースー」じゃありません。そんなお笑いを誘うようなタイプじゃなくてぼくとつで活舌もよい方ではないのですからもっと普通に、だけどナチュラルにやり取りできるイメージを前面に出すべきだったと思います。あれは戦略失敗です。そもそも見た目がおじさん丸出しなので服のセンスでネクタイとかポケットチーフでポイントをつけるといった工夫があってもよかったのになぁ、と思います。

個人的には内閣の大幅刷新が必要ではないかと思っています。自民党の時代でもなくなってきているように思います。理由は巨大組織で胡坐をかいているように見えるのです。多分、この体制ではあと5年後には外からの圧力で大きな変革が起こらざるを得ないかもしれません。ならば自民党自体が先に変わるという先んずる姿勢を取らないと厳しいでしょう。連立与党については公明党だけではなく、もう少し拡大させて極端な話、維新と国民民主を取り込んでも良いと思っています。

保守の方にとってはあり得ない発想と思うかもしれませんが、若い世代は明らかに中高年層とは違う時代に生きていることを認識すべきかと思います。政治は今日のことも必要ですが、未来の日本の礎だということを肝に銘じるべきだと考えています。今の菅政権では部分的な進捗はあるかもしれませんが、日本人をどう食わせていくのか、残念ながら全体像が見えてこないのです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年12月14日の記事より転載させていただきました。