アゴラ 言論プラットフォーム

政権に期待するDX5か条

明治、大正、昭和、平成。日本近代の起、承、転、結です。
ここで一区切り。
第4次産業革命は近代の内輪の物語だが、Society5.0は太古の狩猟時代からの文明論。
工業・情報の次、すなわち近代の次を指す言葉です。

令和に始まるSociety5.0は、10年単位の切り替えではなく、大きな歴史の分岐点です。
だとして、令和のぼくたちは、平成を総括しておきたい。
平成30年は、デジタル敗戦であった。
コロナの貢献は、それを突きつけたことにあります。

先人は、昭和の前半、敗けました。
軍で挑み。
そしてぼくたちは、昭和の後半、勝ちました。
産で挑み。

産業だけではなく、アナログ教育でも、官僚主導の行政でも、世界に冠たるものを築きました。
勝ちすぎたのかな。
それがゆえに平成、負けました。
アナログ昭和を固守して敗けました。

DXに遅れ、競争力は1位から34位に落ちました。
デジタル教育は先進国最下位。
行政はFAX中心でコロナに立ち向かえません。
それを見える化した非文明の使者がコロナです。

新内閣の仕事はハッキリしています。DX。これ一本。
DXを妨げてきたのは政治ではない。みんなです。産学官みんな。
それは領域の問題ではなく、世代の問題。
ぼくを含む昭和世代をパージして、令和の体制を求めます。

外交は米欧アが身悶えている中、日本だけが安定・強力政権を続けました。
安倍政権は史上例のないポジションを国際社会に築きました。
外交、通商の面でこれほど楽ちんな環境もありますまい。
新内閣は、内政=DX。これに突進していただきたい。

政策屋という職業柄ぼくは内閣が動くたび、IT政策を提案してきました。
民主党政権では「情報通信八策」を提案し、政策に組み込んでもらいました。
省庁、産業、行政、教育、医療、インフラ、コンテンツ、災害。
「民主党情報通信議員連盟マニフェスト」

自民党政権に戻り、第2次安倍内閣発足に当たっては、民主党の成果と反省を踏まえて、産業、教育、コンテンツ、政治、行政の「五箇条の御期待」を掲げました。
「新政権に求めるメディア政策」

できたこともある。できなかったこともある。
ぼくは菅政権の誕生に当たり、ここまでの成果も認めつつ、平成の敗戦、内政DXの必要性を踏まえて、安倍政権に求めた五箇条を継承した要望を提出しました。
産業、教育、コンテンツ、地方、行政の五箇条です。

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1 産業DX

テレワークなどのDXコスト及び投資に対する大幅な減税措置を講ずる。
DXを進めない経営者の退場を促すアナウンスメント政策を導入する。全産業の経営をデジタル・データ利用世代にシフトするよう促し、DX対応で競争力を強化した経営を称揚する。

2 教育DX

デジタル教科書とPC一人1台配備が10年がかりで実現することを評価しつつ、デジタル教科書無償化、家庭の通信費負担への対策、オンライン授業の規制全廃などデジタル教育1stに向けた次ステップを踏む。行政コスト増加は電波利用料引き上げを原資とする。
さらにAIやブロックチェーンなど技術の導入により、教科や学校の枠を超える「超教育」を実装し、学校制度の見直しにつなげる。

3 コンテンツDX

NHK同時配信が実現したことを評価しつつ、通信・放送融合、グローバル中心、データ主導の時代に適合する制度の構築を図る。特に、制定半世紀を迎えた著作権制度の抜本見直し、産業構造の変化に備えた放送制度の見直しを行う。

4 地方DX

東京の力を移転するのではなく、自らのDXと規制緩和とで地方創生を進めるよう促す。
地域のDXを促進するため、新たな交付金を創設する。
各地のスマートシティを連結してスマート列島を形成することを支援する。

5 行政DX

「デジタル庁」を実現させる。行政IT化を軸に編成しつつ、教育・医療など各般のDXを進めるエンジンとする。まずは官庁のFaxとハンコを全廃する。
さらに、軍・産の近代を超える令和以後の国のかたちを示す組織として、知財・文化庁ほかソフト行政を連結した「文化省」を設立することを目指す。

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政権発足後、図らずもDXイチ押しとなりました。ビックリしています。
これが1年続くと大きい。くじけず、お願いします。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2020年12月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。