一人っきりのクリスマス

この時期になると頭から勝手に曲が流れてくるんです、山下達郎のクリスマスイブ。よりによってなんでマライアキャリーのように明るいクリスマスソングではないのでしょうか?

この歌、1983年12月にリリースされているのですが、販売会社が本気で売る気がなかったため、毎年、時期になるとちょろ出ししていたのですが、87年にJR東がCMで使って大ブレイクし、今日に至るまでJポップに於いてクリスマスソングの代表曲であります。

ただ、この曲の歌詞はあまりにも寂しいのです。

雨は夜更け過ぎに 雪へと変わるだろう
Silent night. Holly night
きっと君は来ない
一人きりのクリスマス・イブ
Silent night. Holly night

これがなぜ、日本のクリスマスソングの代表曲なのか、男の哀愁(CMでは逆になっています)が絵になるのか、よくわかりません。ただ言えることは一人っきりのクリスマスが日本では当たり前になりつつある現実は直視しなくてはいけないのかもしれません。80年代ぐらいまではこの曲のように寂しいという表現がぴったり来ていたのですが、今では女子会、おひとり様クリスマス、男の世界では「クリスマス、俺には関係ない」というのが当たり前になりつつあります。

(写真AC:編集部)

この行動変化は恋愛率が下がっていることも当然影響します。2020年の恋愛事情調査によると彼氏がいない女性は6割、彼女がいない男性が7割となっています。この1割の差は何だろうと思うのですが、多分、女性の見栄と恋愛の定義があいまいなのだろうと思っています。それにしても2/3に恋愛相手がいないわけですから一人っきりのクリスマスイブは当然の帰着点であります。

では結婚する気はあるのか、と言えば女性は9割、男性は85%がそう思っています。思うけれど実現しないのが結婚であります。理由は女性は現実的であり、その男性の人生を見てしまうからであります。損得勘定が先に来るといった方がよいでしょうか?それこそ恋愛は顔かたちが勝負だけど結婚となると年収、勤め先、実家の資産…といったマネー先行であとは性格などの一致性、最後が顔かたちなのだと理解しています。

一方、男性にも言い分はあります。先日もある適齢期の独身男性と話をしていて「結婚する気は?」と聞けば「全くありません。今は彼女より仕事で一旗揚げたい」です。また「自分のお金を相手に半分取られるって何なんですか?」と言われたらグーの根も出ません。

これ、社会秩序の崩壊ではないかと思うのです。そもそも恋愛をしなくなった理由に男性の女性化(ジェンダーレス)が進行していることも事実です。先日もあるテレビに有名ユーチューバーが出演していたのですが、男か女かずっとわからなかったのです。(あとで男と判明しました。)化粧して、ファッションがジェンダーレス、しゃべり方もソフトタッチです。この場合、女性は男性を求めるのではなく、お友達感覚になりやすいでしょう。極論すればオトコもクマのぬいぐるみと同じじゃないか、と言えなくもありません。

よって婚姻率は当然ながら下がります。統計が出ているのは令和元年までですが、その年は「記念すべき年」なので「日付調整婚」が増え、前年比増となっていますが、年間婚姻数は60万組を切っています。2001年が80万組でしたからトレンドとしては着実に下がっています。分母となる子供の数が減っているので婚姻数も減るわけですが、個人的な予想としてこの60万組は5-10年後には40万組を割るとみています。

「なんで結婚しないの?」と一定年齢から上の方は思うでしょう。私はそんな声に対して「結婚の価値観が変わったんだから押し付けちゃだめ」と申し上げています。

では更に話を進めると政府が一番気にする指標、出生数が「2021年に80万人割れか」と日経が報じています。これは国立社会保障人口問題研究所が17年に示した最も新しい推計よりも12年前倒しだそうですが、それでもこの記事は20年の出生者数が84.8万人を基準に算出しています。私は11月15日の「東アジアの怪、なぜ出生率がそこまで低い?」で予想しているようにこの数字は甘く、82万人台ぐらいで着地すると予想しています。とすれば日経や人口問題研究所の予想を更に超える出生率の低下があり得るということです。

どうしたらよいのでしょうか?私は人口減は避けられないと申し上げています。しかし、どうしてもそれを政府が止めたいのであれば一つだけ方法があります。それは「生きる喜び」と「共に歩む愛を育む土壌」を作ることです。それは託児所じゃないし子供の医療費でもないし、出産費用でもないのです。政府のセンスのなさは格別であります。変えなきゃいけないのは若者に夢と希望とチャンスを与えることです。なぜ、アメリカでは子供が多いのか、それはきちんとした人生を踏み外さない限り得られるオポチュニティがあるからではないでしょうか?

日本の若者は未来に対する夢なんてないに等しい状態です。1年後より今。それしか見えていません。だから年金だって払わないですよね。というか払えないし、払ってもこれだけ?と言われます。社会参加意識がほとんどなく、自分のことは自分でしか救えないと思っています。厭世観そのものなんです。

一人っきりのクリスマスはある意味、日本が80年代の寂しいという思いから選択肢がなく、自分だけの世界に閉じこもる社会に変貌させてしまったという意味で山下達郎氏のこの曲の解釈も変わってしまったのかもしれません。今ならどんな歌詞をつけるのでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年12月25日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。