銀行の「おせっかいなサービス」

銀行のサービスには、不思議なものがたくさんありますが、その1つが振り込み限度額の設定です。

私がメインで使っている「みどりの銀行」は、生体認証カードの場合、法人口座の1日の振込(と引き出し)は500万円まで。さらに1月の累計振込(と引き出し)の限度は1000万円とデフォルト設定されています(写真)が、これが不便です。通常の利用で、ほぼ毎月これを超えてしまうからです。

例えば、法人税をクレジットカード払いにする場合、事前にカード会社への振り込みを行う必要があります。あるいは、不動産購入や金融商品の購入で、1000万円を超える投資額になる事も珍しくありません。

印鑑持参なら、店頭受付で限度額を超えても振り込みできるようです。でも、手数料が高くなるだけでなく、伝票に記入して窓口の順番待ちをしなければなりませんから面倒です。

結局、ATMで1000万円以上の振り込みができるように、その都度本人確認書類を提示し、一時的な限度額の解除をお願いしています。

この振り込み限度額の設定の目的は、不正な高額振り込みを防止することにあると思います。

確かに個人の口座であれば、高齢者などが高額の振り込め詐欺に引っかかるリスクを防止するメリットがあるでしょう。

しかし、法人口座は企業が金融活動をするためのものであり、振り込め詐欺などにあったとしても、それは銀行の責任ではなく会社側が対応すべき問題です。

とすれば限度額を銀行側が最初から設定するのではなく、企業が限度額を自由に設定できるようにするのが合理的ではないでしょうか。

振り込み限度額の変更は、銀行側に書類を申請すれば可能との事です。しかし、支店に出向いて書類を提出する手続きが必要なようです。

これも億劫なので、結局毎回、近くにある店舗で本人確認書類を提示して、都度対応をお願いすることになってしまいます。

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振り込み限度額の設定は、他行も似たような設定になっているようで、もしかしたら当局からの指導によるものかもしれません。

いずれにしても、法人口座の振り込み限度額の設定は「おせっかいなサービス」だと思います。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年12月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。