旭川市で、新型コロナのクラスターが起こった病院の職員や家族が、医療機関で診療拒否されるケースが複数あったと報道されていた。吉田病院や障害者施設などの関係者が医療機関で「クラスター関係の方は受診できない」などと断られたそうだ。市保健所は市医師会に改善を申し入れたようだが、なんだか違和感がある。
私はコロナ感染症対応の病院職員や家族に対する差別行為に憤りを感じていたが、上記のケースで医師会に改善を申し入れるのはちょっと違う気がする。上記機関での感染拡大は相当なレベルだったし、家庭内での感染が多くなっていると言われている状況下では、医療機関が尻込みするのは理解できる。濃厚接触者でなかったそうだが、受診した医療機関ではそんなことはわからないし、医療機関従事者や他の患者さんに配慮すれば当然そのような対応に出ても自然だ。
そもそも、クラスターがこれだけ大規模になれば、感染経路や濃厚接触者を厳格に規定することなどできるはずもない。まずは、全職員とその家族にPCR検査を提供するくらいのことはすべきではないのか。濃厚接触者の認定も甘くなってきているように聞いているし(PCR検査が追い付かないという物理的な理由で、医学的な理由ではない)、危機管理の観点からは、もしもを考えるのは当然である。
今夕、総理が記者会見をされたが、正直なところ、何を訴えたかったのか、今ひとつ伝わるものがなかった。昨日、今日と最多感染確認者を更新しているが、外の人出を見ていると、もう少し増えるような気がする。もし、総理の会見から危機意識が伝わったとしても(私はメルケル首相のインパクトの10分の1もないと感じた)、その効果は10日後くらいである。ブレーキをかけるタイミングが遅きに失したと言えるし、イギリスのウイルス変異種も5人で見つかっている。すでに数週間前から日本に入っているならば、最近の急増はこの影響かもしれない。3000人分のウイルスゲノムは1台の機械で2日間でできる。全例解析して結果を即時公表すべきだ。
科学なき感染対策でこのしたたかなウイルスに勝てるはずもない。PCR検査の拡充とウイルスゲノムの解析なくしては、悲劇が惨劇になる。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年12月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。