GoToだけでなく「ふるさと納税」もやめるべき

GoToトラベルが新型コロナウイルス感染拡大の影響から、一時中止となりました。そもそも、普段行かない人たちが高額ホテルに殺到し、旅行に出かける時間がある人だけが恩恵を受ける不公平な制度だと思っています。

15%が受け取れる地域クーポン券も使い勝手が悪く、ほとんどの人が現地で仕方なく無駄なものを買っている状態です。

非効率な観光業振興策あり、観光業をサポートするなら、もっと効率的で平等な方法にすべきです。

GoToよりもさらに問題だと思うのが、「ふるさと納税」です。年末に向けて、駆け込みの申し込みが増えているようです。

ふるさと納税とは、納税ではなく寄付に当たります。自分が指定した自治体に寄付をすることにより、実質負担2000円で、その分を所得税から差し引くことができるのです。

そもそもは、応援したい自治体を自分の意思で選んで、経済的にサポートできるようにする目的で作られた制度です。ところが、現状のほとんどの利用者は、返礼品目当てにふるさと納税を行っています。それは、ふるさと納税の自治体ランキング(図表)を見れば明らかです。2000円で、牛肉やうに・いくら、カニといった高級食材がもらえる仕組みになってしまっています。

過熱する返礼品競争を沈静化させるため、ふるさと納税における自治体の返礼品は「寄付額の3割以下の地場産品」に限定されています。また、地域に関係のない金券を贈ることも禁止されています。

ところが、民間企業は規制の対象外で、ふるさと納税サイトの運営会社が、独自の特典を追加することは黙認されています。最近、アマゾンギフトなどが特典としてもらえるふるさと納税サイトが登場しています。実質的な返戻額の上乗せになっている「抜け穴スキーム」です。

寄付額の3割の返礼品としても、郵送コストや事務経費を含めれば、4割あるいは、それ以上のコストがかかっているはずです。

つまり、誰かが100万円のふるさと納税をしたとすると、100万円は住んでいる自治体の税額が減少し、返礼品コスト等で50万円近くが消えてしまい、寄付される実質的な金額は半分になってしまうということです。

総務省によると、全国の自治体が2019年度に受け入れたふるさと納税の寄付総額は、約4875億円とのことです。4割としても、2000億円以上が消えた計算になります。

GoToもふるさと納税も、非効率な制度だとわかっていながら、やらない人が損をする制度です。

税収が減少し、財政赤字が拡大する中、もっと丁寧な税金の使い方を工夫すべきではないでしょうか?


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年12月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。