賀正 でございます。いつものとおり、2021年を始めるに当たって、2020年を振り返ります。
2020年は世界史に残る年。断層があります。それまでの世とこれからでは光景が違います。
オリパラは延期、数多くのプロジェクトが立ち止まり、人々は引きこもりました。他方、DXは進み、eスポーツは隆盛、ぼくらの2大プロジェクト、CiPとiUは幕を開けました。
けれども途切れることなく進むために、あえて去年までとの地続きとして、従来のスタイルで年始の報告を申し上げます。
「City」「Cool」「Convergence」3本柱のプロジェクトです。
1 CITY
Pop & Techの街づくりをするプロジェクトです。
1) CiP
港区竹芝にデジタル・コンテンツ産業集積特区を作る「CiP」。Pop &Tech 特区CiP。社団法人「CiP協議会」が企画・準備してきた「東京ポートシティ竹芝」が9月に街開きしました。
平井卓也デジタル大臣から、ここをデジタル庁の支局にしたいと要請があり、その準備も進めます。
既にアーティストコモンズ、サイネージ実験、世界オタク研究所等のプロジェクトが走っています。CiPファンドを立ち上げ、起業支援も進めています。「iU」のサテライト誘致などによる「超教育」構想を進めます。
ロボット、AI,IoT、5G、8K、ドローン、モビリティ、情報銀行など、まるごと実装します。既に多数のロボット、センサー、AI、サイネージが稼働し、世界トップのスマート地区となっています。
京都・沖縄等の都市、国内・海外との大学、韓国政府・コンテンツ振興院、スペイン・カタルーニャ州など海外との連携も強化します。愛知県が計画する巨大インキュベーション施設「Station Ai」の設立にも関わっており、竹芝モデルの横展開を進めます。
2021年7月3・4日には、CiP街開きイベント「ちょっと先のおもしろい未来」英語名Change Tomorrow を開催します。略してチョモロー。Chomorrow。ポップとテックをギュッと詰めます。ゆくゆくはSXSWやアルスエレクトロニカを凌ぐイベントに成長させたいと考えています。
2) iU
ICTビジネスの専門職大学「iU」を2020年4月に開学し、ぼくが学長に就きました。ICT☓ビジネス☓英語の徹底教育、全員インターンの実践教育、オンライン重視。
学生が「全員起業」できる環境を整備します。全員が起業に成功して、「就職率ゼロ」を目指します。ただ、学生のうちに一度は失敗して学べる「失敗大学」でもあります。
本校舎は東京都墨田区、スカイツリーの近くに開設しました。ポップ&テック特区の竹芝CiPにサテライトを置きます。
協力を表明している連携企業は250社を超えています。教員の8割は企業出身。ICT、通信、放送、メーカーなどさまざま。さらに客員教授として第一線の経営者などプロを迎えます。合計300名を超え、学生より教授が多い大学となりそうです。
コロナの中、全オンラインで開学しました。フルデジタルを準備してきたため、さほど混乱はありませんでした。6月にキャンパスをオープン、学生は集い、学食も地域に開いています。
一期生は、他大学を辞めて入学、親子入学、親の反対を押し切っての入学など多彩で、eスポーツ選手権を開催したり、既に起業したりする例もみられます。
校歌は「少年ナイフ」が作りました。世界一パンクな校歌です。
“Let’s Go iU ” by Shonen Knife
「学長くん」によるオンライン講義、ウクレレ漫談、今日のヒトコト、メッセージなどYouTube、twitter、インスタグラム、tiktokなどで毎日配信しています。
3) 超人スポーツ
身体と技術を融合させ、人機一体の新しいスポーツを開発する「超人スポーツ」。稲見昌彦さんとぼくが共同代表、南澤孝太さんが専務理事として社団法人「超人スポーツ協会」を運営しています。
2021年の東京オリパラに向けて大会を開くべく新スポーツの開発・普及を進めています。2025年の大阪万博で、万博公園を使った大会も企画しています。
2 COOL
ポップカルチャーの世界展開やコンテンツの開発を進めるプロジェクトです。
1) 京都国際映画祭
吉本興業が主導する「映画もアートもその他もぜんぶ」のイベント、実行委員長を務めています。2020年は全オンライン開催でした。2021年はハイブリッドを企画します。先輩格の沖縄国際映画祭との連携も深めます。
2) 世界オタク研究所
国際オタクイベント協会IOEAとCiPが連携し、世界オタク研究所を設立しました。2019年にはスペイン・バルセロナにてオタク・サミットを開催。2020年はコロナで中止、2021年版を企画します。
3) Artist Commons
アーティストに固有のIDを付与し、コンテンツやグッズ、ライブ等の情報を展開しやすいようにするプロジェクト「Artist Commons」を音楽業界と進めています。2019年に法人化しました。経済産業省の支援を得ています。
4) CiPファンド
「CiPファンド」を設立しました。資金の出し手と起業家とのマッチング基盤が整います。政府・クールジャパン機構とも連携します。
2020年は様子見の投資家が増えた中、これをチャンスと見て逆張りの精神で活動しました。既にフーモア、クオン、オーディオストック、バルスの4件に出資を実行しました。
5) eスポーツ
経済産業省+日本eスポーツ連合JeSU「eスポーツを活性化させるための方策に関する検討会」の座長を務め、その報告に沿って「超eスポーツ学校」などのアクションを起こしています。
JeSUの特別顧問にぼくが就任し、業界との連携も深めてまいります。
6) NHKクールジャパン
日本のクールを発信しつづける番組、16年目に入ります。BSを代表する長寿番組になりました。2020年は「フルーツ」「雪」「オタク」「笑顔」「テイクアウト」「道」の巻に参加しました。
7) これも学習マンガだ!
2015年から続く選書プロジェクト。里中満智子委員長、堀江貴文さん、佐渡島庸平さんらと委員を務め、2020年は50作品を選出しました。ぼくは「ハコヅメ」「映像研には手を出すな」「ダンス・ダンス・ダンスール」「ブルーピリオド」「銀河の死なない子供たちへ」の書評を書きました。
3 CONVERGENCE
メディア融合や新メディア開発を進めるプロジェクトです。
1) デジタルサイネージ
「デジタルサイネージコンソーシアム」設立13年。理事長を務めます。多言語・防災おもてなしサイネージとが国家課題と位置づけられ、総務省ICT懇談会の場で方策づくりが続いています。これを推し進めます。総務省の実証実験にもCiPとして参加・協力しています。
2) 4K8Kパブリックビューイング
4K8Kはじめ超高精細映像パブリックビューイングの施設整備も総務省が推進しています。その推進母体「映像配信高度化機構」の理事長を務めます。東京オリパラまでに全国に超高精細・大画面のパブリックビューイング場を整備します。
3) IPDC/スマート放送
放送の電波に通信技術であるIPを乗せるサービスを開発するIP Data Casting(IPDC)。代表を務める「IPDCフォーラム」とともにCiP特区でのメディア融合実験を企画しています。V-high周波数帯の実験試験局免許を取得し、竹芝で世界初のIoT放送局の実験を行いました。
4) オープンデータ
オープンデータ対策を進めます。VLED「社団法人オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構」の理事を務め、普及啓発に努めています。
5) データ流通
データ取引市場の形成はじめデータの提供・利用を進めるためのDTA「社団法人データ流通推進協議会」の理事を務めます。オープンデータとともに推進します。
6) シェアリングエコノミー
内閣官房IT戦略室の検討会議での議論を踏まえ、シェアリングエコノミー認証制度を進めています。認証委員会に参加しています。
7) ネット炎上
ネット炎上対策を講ずるプロジェクト。理事長を務める社団法人「デジタルリスク協会」とともに、事例調査、啓発教育などの活動を進めています。
8) 理研AIPセンター
AI研究開発の日本の総本山、理研AIPセンター。コーディネイターに就任し、AI研究と社会経済をつなぎます。あれこれ仕掛けてまいります。
4 参考
1)超教育協会
教育とテクノロジーの融合を進める団体「超教育協会」の専務理事を務めています。
AI、VR、IoT、データ、ブロックチェーン等先端技術の教育への導入を進める活動が始まっており、各種ワーキンググループが立ち上がっています。
デジタル教科書を制度化する学校教育法等改正、超党派の国会議員による教育ICT議連が提出した「教育情報化推進基本法」も成立。コロナ休校も手伝って、2020年緊急経済対策により学校PC一人一台が一気に実現します。ぼくらが10年にわたり主張してきたことが制度的にも財政的にも整った歴史的な年となりました。
さらに、教育IT化の規制撤廃・緩和、デジタル教科書無償化・家庭のIT環境整備などの課題に取り組むとともに、AI・データ利用など超教育の推進に向け対応を強化します。
2) デジタルキッズ
CANVAS石戸理事長率いるデジタルキッズも強力に進んでいます。ワークショックコレクション、国際デジタルえほんフェアも開催してまいります。CANVAS協力のもと吉本興業とNTTが教育コンテンツなどを発信する事業「ラフ&ピース マザー」もサービスインします。
3) 情報リテラシー
青少年ネット安全・安心政策が新段階を迎えています。政府会議の主査を務めながら対応を進化させます。安心ネットづくり促進協議会では代表理事を務めます。
4) 企業及び政府
吉本興業、スペースシャワーネットワークの社外取締役を務めています。
内閣府知財本部(知財戦略)、内閣官房IT戦略室(シェアエコ)、総務省(放送、青少年、白書)、文化庁(著作権)、消費者庁の委員を務めています。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2021年1月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。