もうすぐ1年。
飲食店の売上が落ち始めたのは昨年の2月からでした。
私が経営する店も中旬までは2月の最高売上を狙えそうな勢いで伸びていたのですが、後半は急激に失速し、結局前年割れに。
それから緊急事態宣言が発令され、4月、5月は前年比で1割程度となる地獄のような結果。
6月は少し回復しましたが、感染者数の増加が再度騒がれはじめた7月からまたダウン。
その後も売上が戻らない日々を耐えて耐えて、やっと10月、11月と少し回復してきたかと思ったらまた12月には大きく前年割れ。
7月から10月で少しでも利益が出たら「全て社員に還元する」と約束をした結果、みんなが必死にロス/シフトコントロールをしてくれて、今年度初めてその間は黒字が出ましたが、宣言通り全額を臨時手当にした為、今期は赤字が確定です。勿論、責任を取って私の報酬は実質ゼロが続いています。
それでもまだ、過去の実績から金融機関が融資をしてフォローをしてくれているので生き残ることが出来ています。
しかし、既にそれさえ叶わないという飲食業の経営者が急増していて、倒産や廃業の予備軍がマグマのように蓄積してきているのが現状です。
そして、再び発令される緊急事態宣言。
いよいよ、それは噴火の引き金になってしまうのではないかと危惧しています。
しかも、今回は菅総理や小池都知事の記者会見でも、マスコミの報道でも「*飲食業」が強烈に名指しをされており、緊急事態宣言自体も飲食業をターゲットとしたものになるとのこと。
これでは、世間からのイメージも「外食」=「悪」となってしまい、仮に今後数ヶ月でコロナが沈静化に向かったとしても、産業としての回復力が鈍化することも懸念されます。
飲食業を悪者とする明確な根拠もいまだ示されていません。飲食店がクラスターの発生源になったというケースは決して多くはないのです。国立感染症研究所の調査でも16%でしかないと報告されています。
問題は会食相手。つまり、会食では無かったとしても、その相手と会話するだけでうつされている可能性は高いので、一人ひとりが検査を受けるなり、気をつけるなりするのが一番効果的です。
私は今まで、この苦境を乗り越えるためにダイレクトに家賃を劣後ローンで融資する政策を提案してきました。使途が明確で、審査も素早くでき、振込先が直接不動産オーナーで、固定費を一気に削減でき、超長期の資本性融資となり、財政的にも負担が少ないからです。
現在の家賃支援は「事業主によっては必要以上にお金が届き、必要な事業者には全く足りない、全国一律のバラマキ」であり、公平でも的確でもありません。
しかし、今回で今まで以上の負担を外食産業に強いるならば、更に一歩踏み込んだ支援策が必要になります。
裾野が広い飲食業を守ることは多岐に渡る産業の雇用を守ることにもなると政府も明言している訳ですから、形としては米国が導入したPPP(Paycheck Protection Program)が理にかなっています。
つまり、PPP of Japan。
『日本版PPP』をいよいよ実現する必要があると思います。
米国版PPPでは給与、賃料、保険や公共料金の支払い用に、一事業者あたり上限約10億円の融資をスピーディーに行いました。そして、雇用が守られた場合は、その融資が返済免除となります。
日本では既に雇用調整助成金と家賃支援を一部出して頂いていますので、それから先の1年分を、上限を定めずに融資をし、債務免除にならなかった部分はやはり劣後ローンで長期の返済を許容する。真面目な日本人ですから、可能な範囲であれば月々の返済はしっかり行い、デフォルト率は低く抑えられるはずです。
いずれにせよ、特措法の改正と共に早急に取り組むべき課題です。このままでは2021年も過去最高の飲食の倒産・廃業数を更新し、多くの雇用が失われることになります。その中には、本来であれば好調で、継承するべき日本の食文化も多く含まれることになる筈です。
国会で長い冬休みを取っている場合ではありません。
飲食業の人間は働かなければ収入を得られないし、会社は潰れ、経営者は路頭に迷うのです。とにかく働きたいのに、働くなと言われている異常な状態だということを認識して頂き、1日も早く的確な支援策を実現して頂きたいと思います。
歩いて見てまわれば、地域を問わずシャッター街が急増している事が分かります。銀座でも、心斎橋でも…
編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、元参議院議員の松田公太氏のオフィシャルブログ 2021年1月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。