1月4日、国内外の新聞・テレビなどの各メディアは、トランプ大統領が2日にジョージア州のラフェンスパーガー長官(以下、長官)との電話会談で、「選挙結果を覆す票を『見つけろ』と要請した」などとする記事を挙って掲載した。
各報道がネタ元にしたワシントンポスト紙(WaP0)の記事は2本で、1本はエイミー・ガードナーによる「『11,780票を見つけたい』:トランプは1時間に及ぶ異常な電話でジョージア州務長官に投票を再計算するよう圧力を掛けた」という見出しの、13,000字ほどの抜粋記事だ。
その記事には「全文」にリンクが張ってあり、それは「これがトランプとラフェンスパーガーの間の電話の完全な記録と音声」と題された、電話のやり取りのすべてを逐一書き起こした記事で、ガードナー記事の約4倍もの長文だ。
録音は長官側がWaPoに持ち込んだとされるが真偽は不明。もしそうなら、長官側の保身が目的だったとしても、別に含むところ、つまりトランプ自身と5日の上院決戦選挙の共和党候補へのダメージ狙いがあったと勘ぐられても仕方あるまい。
以下に「全文」を要約する。結論を先に言えば、各紙の見出しは多分にガードナー記事に引き摺られたもののようだ。つまり、トランプの言わんとするところを約5万字から「俯瞰的・総合的」には読み込んでおらず、捏造とは言わないまでも印象操作に近い記事と筆者には思える。
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電話会談には、トランプ側にはマーク・メドウズ首席補佐官、クレタ・ミッチェルとカート・ヒルベルトらの弁護士数名が、長官側ではライアン・ジャーマニー弁護士とジョーダン・フックス州務副長官が参加した。
会話はトランプがバイデンとの票差11,779について長官に念を押すことで始まり、不正とされる行為を次々列挙、それを長官らに確認してゆく作業が続いた。弁護士が立ち会っているので、トランプの挙げる不正証拠はどれも虚偽が刑事罰となる宣誓供述書に基づくものであろう。
トランプはまず、投票済みだから投票できないと投票所で言われた5万人に触れ、有権者登録に載っていない4,502人、空き家と私書箱を住所とする18,325人と904人を指摘し、世界中が画像を見たフルトン郡開票所の監視カメラに写った女性について彼女はプロの投票詐欺師だと述べた。
監視員がいない場所で18,000票が7~8時間の間に数えた女性一人の実名(記事は匿名)を挙げたのだ。さらに遺棄された投票箱の写真と宣誓供述書や、5千人近くの死者が投票したことに触れ、合計30万の偽の投票用紙があり、これは11,779の票差よりはるかに大きいとして、冒頭の話を結んだ。
メドウズが引き取り、長官に対して、我々はすべての公正な票が数えられた訳ではないと信じていて、貴方と対立している。望むことは、このことを詳しく調べるための何らかの合意を見つけることができるかだ、とフルトン郡の件にも言及しつつ述べた。
長官は、「大統領のご発言を聞いた。我々は大統領が起こした訴訟と論争に法廷で対応しなければならなかった。貴方が勝ったことには同意しない。我々は州上院、州議会議事堂、政府問題委員会と議論のある問題を1件ずつ遡った。共和党国会議員とも2時間話し合った」と述べた。
そして、主要な問題は不在者投票の処理と思うが、全ての投票を手で再集計し直して、ドミニオンマシンの結果と比較し、さらにもう一度再集計してもほぼ同じ結果だった。だから我々はそれについては問題ないと思うとした。
トランプは、他の州ではドミニオンで甚大な問題があったが、それ以外にこの州では控えめな数字でも11,779の票差の何倍もの問題票があるとし、ジョージアと米国の人々は怒っている。不正の数字は月曜日(決選投票前日)にまた言う。君が再計算したと言っても問題にならないと述べた。
長官は、「大統領がお持ちの課題は、データが間違っていること。死んだ人は5千人以上ではなく2人でした」と述べたが、クレタ弁護士が「我々はその記録を持っていない。数週間、公式非公式に提案してきたことの1つは、必要な記録を我々に提供することだ」と反論した。
トランプも、ある州では途方もない数の死者の投票があり、ジョージアもそうだと思う。が、(フルトンの)詐欺師の偽票はそれよりはるかに多い。新しい壊滅的も画像がある。彼らはそれを3回集計機に掛けた。なぜ3回なのか判らない、なぜ5回ではないでしょうか?と続けた。
長官は、そのビデオはジュリアーニらが細切れにしたので残念だとし、我々はWSB-TVを持ち込み、完全なテープを見てもらったが、起こった出来事は貴方が知っているものとは程遠いと述べた。
トランプは、監視員はどこにいたのか、「世界中が知っている(匿名)はどこにいる?」、「それを正当化することはできない」として、「なぜ彼らは3回投票したかは、あなたが知っている、彼らはそれらを3回入れた」と長官を難じた。
長官は「大統領、彼らはそれを入れませんでした。その監査を行ったところ、3回スキャンされていないことが最終的に証明されました」、「大統領、WSBからのリンクをお送りします」と抗弁した。が、トランプは「私はそれを必要としない。私ははるかに凄い(不正の数字を持っている)」と述べた。
だが、クレタはテープ全体を見たとし、「彼らが全員を去らせたということです—私たちにはそれを言っている宣誓供述書がある」とし、「彼らは投票用紙の処理を開始し、私たちの見積もりでは、およそ18,000の投票がありました」と述べた。
ライアン弁護士が、住所のない者らは選挙直前でなく数年前に戻ってきたと述べたのに対し、クレタは我々も有権者登録を見た、繰り返すが、追加の記録ある場合、それを求めたが共有していない。貴方はただ申し立てを調査したと言い続けた、と反論した。
ライアンがドミニオン機はフルトン郡から移動していないとしたことについて、トランプは確かかと質し、投票用紙の細断はどうかと問うた。ライアンは細断していないと言い、但し、コブ郡では古い分を細断したと述べた。
トランプが、何千もの投票用紙を細断していると聞いているというと、長官は「貴方がソーシャルメディアで抱えている問題です。彼らは何を言うこともできる」と述べた。これにトランプは「ビックテックのソーシャルメディアは気にしない。ビッグテックは君の味方だ。私は正確な選挙をしたいので、なぜ君がその側にいるのか判らない」と皮肉った。
長官が、我々は正確な選挙と信じていると言うと、トランプは否定し、なぜ署名の検査をフルトン郡でなくコブ郡でしたのか、なぜフルトンでして公開しないのか問うた。ライアンは、コブ郡が署名の検証が適切に行われなかったという証拠が提出された唯一の郡だったと釈明した。
トランプは、署名の検証を行う唯一の方法は、11月に署名したものを2年前、4年前、6年前とすることだが、コブ郡でそれをしなかった。フルトン郡でそれをすれば、署名さえされていないもの、偽造されたものも沢山あることに気付くだろう述べた。
それをすれば、それは彼らよりも君らにとって違法であることに気付くだろう。なぜなら、彼らがしたことを君らが報告しないからだ。それは刑事犯罪だ。それは君と君の弁護士にとって大きなリスクだ。私の意見では、彼らは投票用紙を細断し、機械を撤去している。どちらも犯罪だ、と続けた。
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そして各紙の見出しになった以下の一節が述べられる。
「You know, I mean, I’m notifying you that you’re letting it happen. So look. All I want to do is this. I just want to find 11,780 votes, which is one more than we have because we won the state.
(つまり、君がそれを起こさせている張本人だと教えてやってるんだ。見てみろ。俺がやりたいのはこれだけだ。俺はただ、持っているより1票多い11,780票を見つけたいだけなんだ、勝ったのは俺らなんだから)」
その後、軍関係の投票のやり取りなどがあり、長官が、大統領に情報を提出する人々がいて、我々にも情報を出す人々がいるので、法廷で決定をしなければなりません。我々は自分たちの数を支持しなければなりません。我々の数が正しいと信じていますと述べた。
これにトランプは、確かに法廷に持ち込めるが、彼らは我々に裁判官を割り当てさえしない。なぜ君はフルトンの(匿名)をチェックしてみないのか。数字が正しいと言い続けるのではなく、なぜ正しい答えを見つけたくないのか、ブラッド、これらの数字がとても間違っているからか、と応じた。
クレタが引き取り、裁判所は我々の請願に基づいて行動していない。彼らは裁判官さえ割り当てない。が、ジョージアと米国の人々は答えを知る権利を持っている。そして、貴方は我々がアクセスできないデータと記録を持っている、貴方たちの言っていることを確認する方法がない、と述べた。
フルトン郡の開票所の調査を行ったとのことだが報告はない。私は調査報告を見たことがない。それは我々の25のカテゴリーの1つに過ぎない。それには、大統領が述べたようにドミニオン問題さえ入れていまない。ドミニオンは我々の案件の一部ではないと続けた。
ここでヒルベルトがライアンに、我々は貴方のオフィスに座りたいと思っている、我々は妥協を目的として、この電話のように、限られたカテゴリーの投票に対処したい。貴方が我々の数が正確でないことを立証することができればそれで結構だ、と述べた。
ライアンはそれを設定すると言い、我々が見てきたすべてについてお見せできると思うが、法律の下で我々が配ることを許されていないことがあると言うと、トランプはすかさず、法律の下では、君は誤った選挙結果を出すことは許されていませんね、と難じた。
そして明日火曜日に大選挙が予定されている。明日会ってこれらの数字を考えることが本当に重要だと思う。私は誰かを責めるつもりはない、私が言っているのは、貴方が知っている選挙結果と申し立てを検証または無効にすることを確認できるかということだ、とライアンに述べた。
ライアンは、私はそうは言っていません。弁護士同士が一緒に座って説明できることを嬉しく思う、それが間違っていることを我々が知る方法ですと言い、メドウズが、貴方はデータへのアクセスを許可したくない、訴訟が間違っている理由について別の主張をしたい、と言うのかと聞いた。
ライアンは、法律で保護されているデータへのアクセスは許可できないが、我々は一緒に座って話すことができると言い、それをトランプが、でも君は偽の選挙をすることを許されていますか?と混ぜ返すと、ライアンは「No、Sir」と答えた。
トランプは業を煮やし、「いつ署名カウントを行うのか、いつフルトン郡で署名検証を行うのか、君はそれをすると言ったが、突然、それをしないと言う。いつやるのか?」と問い詰め、「そうするつもりです」との返事を引き出した。
その後、秘密保持の話などがあり、最後にトランプが「君らは明日集まることができるか、ブラッド、我々はただ真実が欲しいのだ」と長官に言い、ライアンがメドウズと連絡を取り合うことが決まって電話会談は終了した。
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これが選挙結果を覆すための恫喝だろうか。数ある不正証拠の数件で11,779票差を逆転できると例示的に述べているが、基本的には選挙不正の調査を求めているだけだ。むしろジョージア州が大統領側に余りに情報を与えていないことや、我々は正しい一点張りの、木で鼻を括る対応に驚く。
改めて実感するのは、米国が一国一城の各州の集まり、すなわち合衆国であること、州の間や同じ州内でも都市部と郊外で支持政党に極端な差があること(ある種の分断か)、そして大手メディアの不十分な取材と偏向報道ぶりだ。なおアメリカ時間の6日に起こることは先日投稿した。