20時以降も営業する東京の飲食店は「不謹慎」なのか?

東京では、緊急事態宣言が更に1ヶ月延長されました。世論調査によれば、約9割の人が緊急事態宣言の解除に反対していたと言う事です。内閣支持率が下がり弱体化している菅政権は、世論に逆らうことができなかったというわけです。

しかし、これによって飲食店はさらに大きな打撃を受けることになります。銀座や赤坂の繁華街を歩いていると、閉店した路面の飲食店が一層目に付くようになりました。これらは、緊急事態宣言が解除になっても、もう復活することはありません。

営業時間短縮に協力したお店には、1日6万円の補償があることになっています。私が経営している銀座のバーのような小規模な店舗は、補償金をもらい営業自粛に協力することで、生き延びることができます。

逆に、飲食店の中でも一番打撃が大きいのは、団体需要を取り込んで大口のお客様をメインにしてきたお店です。その中でも、資本力の弱い中規模のお店は売上減少で急速に体力を失っているのです。この手のお店は一日6万円の補償では家賃や従業員の人件費を到底賄うことはできません。

店舗の規模や、店舗数にかかわらず画一的な補償しかしない経済対策は、経営者のリアルな現状を理解していないと思います。

緊急事態宣言から夜8時以降の営業を継続している店舗もあります。六本木の行きつけのお店は、今も深夜2時まで営業しています(写真)。

私の知り合いが経営する「ちゃんこ玉海力」も、来週から営業時間を延長するそうです。

法改正で罰則が課されるようになると状況は変わりますが、少なくとも現時点では営業自粛はあくまで要請です。

20時に閉店して、店舗が潰れても誰も責任を取ってくれません。コロナ感染リスクと店舗の閉鎖リスクを比較しながら、営業時間の判断をするのが、経営者の責務です。

営業時間の延長を評論家目線で「不謹慎」と片付けるこそ不謹慎だと思います。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年2月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。