注目されるアップルカー、日本勢は蚊帳の外か?

アップルの噂されるEV参入は今回は本気の可能性が高いようです。一時は開発縮小であきらめたように見えましたが、現在、アメリカで報じられている内容が正しいとすれば2024年までにジョージア州にあるKIAの工場で生産をする方向のようであります。

(写真AC:編集部)

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アップルカーの開発は2015年ごろからスタートしていましたが、水面下でかなり揺れ動いていたのはその開発責任者が何度も交代したことが一つ上げられるでしょう。その度にスタッフも解雇し、新しいリーダーの元でまた人を集め、ということを繰り返していました。2020年に前任のリーダーが辞めた後、アップルのAI戦略と機械学習のトップで同社の上級副社長のジョン ジャナンドレア氏がアップルカー開発のトップに就任しており、氏の指導力のもと、一気にEVカーの実現に向けて動き出した模様です。

ティムクックCEOは自動車開発についてAIプロジェクトの中でも自律システムを取り込んだAI技術の中でも最も難しいものに取り組んでいる、と述べています。

アップルカーの生産に於いてKIAとの契約は近いのではないか、とされていますが、使うプラットフォームはKIA社のE-GMP という電気自動車専用のプラットフォームが有力視されています。それらの噂を受けてか、現代自動車と傘下の起亜自動車がアメリカでの売れ行きを伸ばしており、高級車部門でもレクサスを抑え始める数字がちらちら見えてきています。

アップルカーの開発の様相からするとこのEVは巨大なテクノロジーの塊の家電と化するのではないかと思われます。つまり、自動車に必要な基本性能は既に成熟しているのでアップルの頭脳を載せるに最もふさわしいベースを探し出したらそれが今回はKIAだったという可能性はあります。

日経はKIAが決定ではなく、日本の自動車メーカーも含め、打診している模様だと報じていますが、これはやや違うのではないかと思います。というのはアップルはKIAと運命共同体になるつもりはなく、将来にわたって何種類か発売するであろうアップルカーの第2弾、第3弾についてはGMおよびステランティス(PSAとFCAの合併会社)にスポットライトが当たっているようです。日系の自動車メーカーの浮いた話は現時点では聞こえてきていません。

バイデン政権がバイアメリカンを唱え、トランプ氏がアメリカ企業のレパトリエーション(国内回帰)を主張したことからアップルはiPhone生産を台湾の鴻海に任せたのと違い、アメリカ国内での生産にこだわる公算は高いと思います。また、中国との軋轢から技術の漏れを考えればアメリカに工場があることが第一条件だったのではないでしょうか?

その選択肢からすれば日系ではEVの北米生産をしている日産しかなく、リーフはテネシー工場で作っていますが、この工場はアメリカの基幹工場で多種類の生産をしていることから難しかったのではないかという気がします。

自動車製造が系列化、重層化していることもあり、仮にKIAとタッグマッチを組むとすれば日本勢は蚊帳の外になる公算は高く、アップルカーの第2弾、第3弾も引っかかりにくいかもしれません。

アップルが本気で2024年頃の発売を目指しているとすれば日系自動車メーカーは国内の様々な議論や’ポリシーに足を囚われているわけにはいかないと思います。IT各社による自動車開発は他にもグーグルがかなり本気で進めているほか、アマゾンも自動配達の車の開発を目指しているとされます。中国勢も激しく競っており、数年のうちに自動車業界の勢力地図、車種、タイプは天地がひっくり返るほどの様変わりになる可能性が高くなってきているとみています。

とすれば日本の車がどれだけ優秀でも日本車自体がガラパゴス化するリスクが顕在化してきたようにも感じます。もちろん、日系メーカーも必死で開発をしているでしょうから当然の対策はあると思いますが多分、今必要なのは日本全体でクルマの常識を変える、そして自動車メーカーだけではなく周辺業界や政府、自治体が一致団結して積極的に開発を支援しないと負け組になりかねないとみています。

国内の自動車販売は2020年は前年比11%減の460万台しかないのです。多くの自動車メーカーは海外市場があるが故に生き残っているといっても過言ではありません。

日本がこれ以上、負け続けることは是が非でも避けてもらいたいと思っています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年2月5日の記事より転載させていただきました。