欧州では昨年末から新型コロナウイルスへのワクチン接種が始まった。ワクチンを製造する製薬大手アストラゼネカの拠点英国ではワクチン接種が加速され、欧州で最初のコロナ感染地となったイタリアでは既に200万人がワクチン接種を受けたという。
ワクチン接種が開始された直後から、英国発のウイルス変異種(B.1.1.7)が感染を拡大し、接種が開始されたワクチンの有効性が問われたが、米製薬大手ファイザーと独バイオ医薬品企業ビオンテックが共同開発したワクチン(BNT162b2)の有効性には問題がないといわれ、ワクチン接種を願う人々を安心させた。その直後、今度は南アフリカ発のウイルス変異種(B.1.351)が欧州にも感染を広め、オーストリアのチロル州では165人の変異種による感染が確認された。メディアの情報によると、南アの変異種は英国発のような感染力はないが、攻撃的でこれまで接種されたワクチンの有効性が減少する懸念があるという専門家の意見も報じられている。
ところで、ドイツのケルン市でワクチン接種後、3人が死亡したという。ケルン市検察局は3件の死亡を重視し、その司法解剖を命じたという。現地メディアによると、その目的は、死因がワクチン接種の副反応か、それとも患者に持病があり、ワクチン接種を受けてそれが悪化し、死をもたらしたかなどを調べることだ。同時に、ワクチン接種した医師側の医療ミスはなかったことをはっきりとさせる狙いがある。
ケルン法医学のロートシルド教授によると、「3件とも過去、かなり重い既往症を抱えていた患者だった」という。2件の直接の死因は重度の肺感染症であり、1件は脳出血が死を引き起こした。明確な点は、3件とも最初のワクチン接種を受けたが、「その数日後、容態が悪化して死んだ」という。
ドイツではコロナ・ワクチンの接種は昨年12月27日に開始された。それ以来、ワクチン接種後の死亡例は今年1月末時点で69件が報告されているが、いずれも既往症の高齢者で、老人ホームに保護されていた。平均年齢は84歳、最年少者は56歳、最高齢者は100歳という。そのため「ワクチン接種後死亡した人はいずれも既往症を抱えていたから、その基礎疾患が死をもたらしたと考えるのが最も合理的だろう」というわけだ。
死亡例のほかに、ワクチン接種後、22件の副反応が報告されている。例えば、顔面麻痺だ。メディアで大きく報道されて注目された。その主因は不明だが、アレルギー反応と受け取られている。そのため、ワクチン接種センターは接種後のアレルギー反応に即対応できる態勢を整えるようにという要請を受けている。例えば、アストラゼネカと英オックスフォード大学が共同開発したワクチンについては「65歳以上の高齢者への接種」について注意を呼びかける声もフランスやベルギーなどで聞かれる。
ちなみに、 独連邦保健省ポール・エールリヒ研究所 (PEI) によると、ドイツでは昨年12月27日から今年1月24日までに、1232件の副反応が、ファイザー・ビオンテックと 米製薬会社モデルナのワクチン接種の合併症と思われるケースが報告されているという。一方、独国立感染症研究所「ロベルト・コッホ研究所」(RKI)によると、同時期、ワクチン接種後、3404件の「副反応」が生じたという。1211件はビオンテック製ワクチンで、17件はモデルナ製のワクチンだ。ドイツでは既に107万人以上の国民がワクチンの投与を受けている。
PEIは「ワクチン接種とその後の急死との関連はまだ調査されていないので何も言えない」と指摘し、国民の間でパニックが生じることを警戒している。ちなみに、ノルウェーでも33件のワクチン接種者の死亡が起きている。そのため、同国政府は既往症を抱える国民の健康チェックの強化を要請している。(ケルン市のワクチン接種後の死亡問題については、「大紀元」独語版2月7日のラインハルド・ベルナー記者の記事を参考)
ところで、オーストリアのワクチン接種は遅れている。接種希望者が多いが、欧州連合(EU)から提供されるワクチンの量が少ない。そこでクルツ首相はドイツ紙ウェルト日曜版でのインタビューの中で「ロシア製や中国のワクチンの国内生産の可能性」を言及し、注目されたわけだ。
隣国ハンガリーではロシア製ワクチンが既に輸入されている。ロシア製ワクチン(スプートニクV)の場合、バイオテックのワクチン(mRNAワクチン)のように超冷温下で保管する必要はなく、保管、輸送も簡単ということで重宝されている。ロシア製の場合(遺伝子組み換えDNAワクチン)、有効性も90%を超えるというから非常に高い。気になる点は、ロシアのプーチン大統領はスプートニクVのワクチンを世界に宣伝しているが、本人が接種したというニュースをまだ聞かないことだ。一方、クルツ首相はヴェルト日曜版の会見で「ロシア製のワクチンが認可されれば、接種する」と公言したという。
いずれにしても、ロシアや中国のワクチンの場合(中国医薬集団、シノファームとシノバック・バイオテックのワクチン)は、臨床試験に関する情報が一切公開されていないため、有効性も不明だ。そのため、フォン・デア・ライエンEU委員長は、「ロシア製と中国製のワクチンが欧州で認可を得るためには全て情報を開示すべきだ」と述べているのは当然だろう。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2021年2月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。