先週2月25日に予算委員会(分科会)で、萩生田文科大臣に対して、わいせつ教員等の欠格事由を厳格化する国民民主党がまとめた法案の骨子について提案、議論させていただきました。それ以降、与党でも議員立法を検討するワーキングチームが立ち上がるなど、動きが出てきました。政治の動かし方には様々な方法があると思いますが、精度の高い対案を出すことも、その一つだと思います。その意味で、国民民主党は「政策先導型」を続けます。
残念ながら、議員立法を性犯罪やわいせつ行為を犯す教員の数が高止まりしています。子供たちが安心して学べる場を保障するのが我々大人の、また政治家の役割であり、私も萩生田大臣と同様、性犯罪やわいせつ行為を犯した人は二度と教壇に戻らせるべきではないと考えますます。しかし一方で、憲法が保障する職業選択の自由や個人情報保護との関係で、そうした規制が簡単ではないことも事実です。ではどのような現実的な解決策があるのか?萩生田文科大臣と予算委員会で論議した概要を以下に掲載しましたので、ご一読いただければ幸いです。
◯玉木雄一郎
大臣に伺います。まず、子供に対する性暴力、わいせつ行為を犯した者が、再度、子供に常時接する教師や、あるいは職種を変えて保育士などの職業に就くことについての大臣の基本的な認識を伺います。
◯萩生田文科大臣
子供たちを守り育てる立場にある教員が子供たちにわいせつな行為を行うことは、断じてあってはならないことだと思います。文科省としては、これまでも各教育委員会に対して、児童生徒に対するわいせつ行為について原則として懲戒処分とするなど、厳正な対応をするよう指導してまいりました。
文科省が昨年検討していた教育職員免許法の改正については、児童生徒等のわいせつ行為を行った教員が二度と教壇に立つことがないようにすべきとの思いを踏まえて、教員免許状の授与要件の厳格化を構想していたのでありますが、この問題については、教員だけでなく、保育士などの子供と日常的に接する職種に共通する課題であると考えております。
政府全体においても、昨年12月に閣議決定さ れた第五次男女共同参画基本計画において、教育、保育施設等や子供が活動する場で働く際に、性犯罪歴がないことの証明を求めることを検討するなど、性被害防止に向けた環境整備を図る旨が盛り込まれており、文科省としても、こうした検討にも積極的に協力していきたいと考えているところです。
◯玉木雄一郎
国民民主党は、保育士及び教員の欠格事由を厳格化するための法案の骨子をまとめました。党内での議論を更に深めるとともに、各党にも呼びかけ、閣法でできないなら議員立法で、与野党各党の理解を得て成立させたいと考えています。
そこで、事務方に伺います。子供に対する性暴力を犯した者が、教員と保育士の間で資格を変えたり、あるいは他県に移ったり、あるいは姓や名前を変えることで再び子供に常時接する職業に就いた結果、再犯に至った逮捕事例を法務省お答えください。
◯竹内政府参考人
お答えいたします。逮捕事例につきましては、法務省で把握しているものはございません。他方、再犯の状況に関する統計データとして幾つか分析しているものはあ るのですけれども、犯行時の職業に着目した分類 というところまでは行っておりません。そのため、委員のお尋ねのあったデータについては、法務省 としては把握をしておりません。
◯玉木雄一郎
文科省は把握していますか。
◯義本政府参考人
お答えいたします。報道で知り得た情報の限りということでございますけれども、御指摘のような事例につきましては、例えば、女子生徒にわいせつ行為を行って逮捕されて懲戒免職を受けた元高等学校の教員が、 その後、他の県の中学校の教員として採用されて、再び女子生徒にわいせつ行為を行って逮捕された事案があったりとか、あるいは、いわゆる児童ポルノ禁止法違反で逮捕された小学校の元教員が、 改名して、その上で他県の小学校の教員に採用されたところに、女子児童へ強制わいせつの容疑で 逮捕された事案ということについて、報道ベースでございますけれども、把握しております。
◯玉木雄一郎
大臣、こういうことが起こらないようにする法改正、制度改正が今すぐ必要だと思いませんか。今あったような事案について、大臣、どうお考えですか。
◯萩生田文科大臣
全くそのとおりでありまして、残念なんですけれども、名前を変えたり、あるいは、結局、今一定期間でバツが消えますので、再度免許の取得をして、そしてその上で再び現場に見えるということもございます。再犯率が非常に高いということも専門家からは言われていますの で、やはりこれは何としても止めるべきだと思います。
私も閣法で何とか出したいと思ったんですが、先ほど先生も御披露いただいたように、憲法上の問題等々ありました。あるいは、やはり日本の矯正制度というのは、要するに、改心する、罪を償うということを前提に行っているので、じゃ、このわいせつ行為だったら駄目で殺人ならいいのかという極論にまで行ってしまいまして、そういう意味では、本当に壁にぶつかってしまったというのが正直なところなんです。
ただ、手をこまねいているばかりではなくて、 今年から、向こう40年間、採用の検索リストに きちんとアクセスができるようにして、しかもそれは、今度省令の改正で、わいせつ行為によって 免許を失った、懲戒免職になったということも記載する予定でございますので、そういう意味では、いろいろな意味で追い込みをしながら、何とかそういう人たちに現場から出ていってもらいたい、 こういう努力をしていきたいと思っています。
◯玉木雄一郎
今、大臣の口からも、再犯率が高いという話がありましたけれども、この再犯率について、特に小児わいせつ等についてはどうなのか、法務省、分かりますか。
◯竹内政府参考人
お答えいたします。子供に対する性犯罪をした者の再犯の状況に関しまして、法務省が把握しているデータといたしましては、平成27年度に法務総合研究所が公表いたしました性犯罪者に関する特別調査というのがございます。この特別調査では、平成20年7月から平成21年6月までの間に性犯罪を含む事件で懲役刑の有罪判決が確定した者を対象といたしまして、その裁判の確定から5年以内の再犯の状況について追跡調査を行っております。その調査結果でございますが、裁判確定から5年以内に性犯罪の再犯に及んだ者の割合を、前の確定裁判における犯行の類型に応じて分析をしているものなんですが、被害者が13歳未満の強制わいせつ事件を犯した者の累計では9.6%、被害者が13歳未満の強姦事件、当時の罪名でございますが、強姦事件を犯した者の累計では5.9%となっております。
◯玉木雄一郎
それは他の類型に比べて高いんですか、低いんですか。
◯竹内政府参考人
服役期間等が違いますので、なかなか単純な比較が難しいところではあるのでございますが、被害者に13歳未満の強制わいせつの事件ですと、先ほど9.6%と申し上げましたが、13歳未満を含まない割合ですと8.1%になります。それから強姦事件でございますが、被害者に13歳未満の強姦事件については5.9%と先ほど申し上げましたが、13歳未満の者を含まない割合では0.9%になっております。
◯玉木雄一郎
いろいろな分析があると思いますが、犯罪白書を見ると、性犯罪犯(刑法犯)の再犯率が最も高いのは小児わいせつ型であり、その再犯の内容を性犯罪者類型に当てはめてみる と、9人のうち8人の再犯が小児わいせつ型に該当したということで、やはり高いのではないかと思われます。だからこそ、やはりしっかりとした対応が必要だと思います。そこで、事務方に伺います。この学校教員の欠格事由について現在どうなっているのか、端的にお答えください。
◯義本政府参考人
お答えいたします。教員の欠格事由につきましては教職員免許法の5条で定めておりまして、実質上のものとしましては、禁錮以上の刑に処せられた者、それから、懲戒免職処分を受けて免許状が効力を失って当該失効の日から3年を経過しない者などには免許を授与しないということになっているところで ございます。
◯玉木雄一郎
それはやはり短過ぎるんじゃないか、短期間で戻ってしまうということなので、これはもう少し長くすべきであるということ。そして、職種を変え、例えば保育士さんとして子供に接する仕事をしてある犯罪を犯しても、その後、教員になるパターンや、あるいは逆のパターンとか、欠格事由が職種によってばらばらになっているので、その辺は合わせた方がいいのではないかということで、国民民主党として、欠格事由をより厳格化する法案を作っております。大臣に是非読んでいただきたいんですが、こういう形で厳格化をする、特に職種を超えて移動することができないように、その辺をそろえることがまず第一歩として必要だと思います。こうした我が党の考え方について、大臣、いかがでしょうか。
◯萩生田文科大臣
先生の党で様々な議論を踏まえて立案を検討されているというのは承知をしております。お聞きしております。先ほどお話がありましたように、学校の教員のみならず、子供たちと接する機会のある職業の人たちが結果としてそういう犯罪を犯してしまうとするならば、教員免許法だけを改正したとしてもこれは解決にならないというのは御指摘のとおりだと思います。したがって、ここは、例えば保育士さんですとか、過去に教員を失格して児童相談所で再犯ということもございました。こういうことも考えなきゃならない。あるいは、誤解なく申し上げますけれども、例えば塾の先生ですとかスイミングクラブのインストラクターだとかサッカークラブのコーチだとか、こういう人たちも含めて、子供たちと接する人たちが健全に仕事をしていただける環境というものをきちんと担保するための何らかの方策は、やはりこの機会に一緒に考えていただかなきゃならないな、そう思っているところでございます。
◯玉木雄一郎
ありがとうございます。私も同じ問題意識です。イギリスなどはいわゆるDBSという制度があって、公的機関がそういった犯罪歴等がないことを証明する認証制度があります。法制度が違いますから諸外国と同じものをつくることは難しいかもしれませんが、例えば里親になるときに求められる証明を子供に接する職業にも同じように求める制度を、何らかの形で導入することが必要だと思います。
特に今大臣がおっしゃったような塾の先生とか、あるいはベビーシッターとか、そういったケース もやはりあるので、憲法上や他の法律上の制約はあるものの、ある種の照会システム、証明システム、データベース、は整えていく必要があると考えます。
なかなか閣法で難しいところは、我々、議員立法で頑張りたいと思いますけれども、一方で、政府においてもできるところから是非取組を一歩でも二歩でも前に進めていただきたいと思います。改めて大臣の決意をお願いします。
◯萩生田文科大臣
なぜ法律が出せないのかと多くの皆さんから疑問の声が上がりました。我々立法府側にいる人間は、内閣法制局の手続を経ないとなかなか法律提出ができないということは皆さん分かっていただけますけれども、国民にとっては、こういう事件が後を絶たないのに一体国会は何をしているんだという御批判をいただく、その気持ちも私は分かります。
他方、やはり、先生冒頭お話しいただいた憲法による職業選択の自由ですとか、あるいは日本は更生を旨として、更生ができるということを前提に矯正施設などが存在しているわけですから、それを全て否定してしまって、一度でも失敗した人は二度と立ち上がれない国ではないということも守っていかなきゃならない。
その中で、法律で他の職業、他の国家資格と横並びじゃなくてもいいんじゃないかという議論が出たのは、例えば犯罪を犯した医師や弁護士も再びその職業に戻ることはできます。しかし、医師や職業はそのことが明らかになれば、そこには患者さんやお客さんは行かなくなると思うんです。ところが、学校の先生、とりわけ公立学校の先生は親や子供たちは選ぶことができないわけですから、そういう特殊な事情も考えながら、ここは一つでも前に進んでいきたい、こんな思いで今、内閣としても努力をさせていただいています。ここは、議員の皆さん方のいろいろな知恵もいただきながら、御指摘のあったように、できるところから一つ一つ穴を埋めていくということもやっていきたいと思います。
40年というのはすごく長い期間で、この採用システムがきちんとワークすれば、一度やはりわいせつで処分された教員が再び免許を取得したとしてもなかなか現場には戻れないと思うし、また、今は履歴書の形態が自治体によって様々なんですけれども、これを統一しようと思っています。要するに、過去にわいせつ行為などで処分歴がある かないかをもう一回ちゃんとチェックして、そこに偽りがあればいつでも退場させられるようなことも考えていきたいと思いますので、考えられる 全てのことを一つ一つ前に進めていきたい、そんな思いでございます。
◯玉木雄一郎
是非進めていただきたいと思います。我々立法府の側としてもできるだけ汗をかきたいし、知恵も出して大臣にも御提案を申し上げたいと思います。
最後に一つ。今大臣がおっしゃった懲戒事実の官報掲載を徹底し、それを40年に広げたというのは大きな一歩だと思いますが、これに加えて、地方検察庁が既決犯罪通知を市町村に通知し、市町村で犯罪人名簿をデータとして残しています。教育委員会からの問合せもできます。しかし、被害者側の年齢が必ずしもデータに入っていないので、小児犯罪だということが分からない。被害者側の年齢も記載する方がいいと思いますが、法務省に伺います。
◯竹内政府参考人
委員御指摘のように、地方検察庁から犯罪人名簿ということで自治体に提供している情報がございますが、その情報としていかなるものが含まれているかというのはちょっとこの場で私も存じ上げませんで、少し改善できるところがあればそこは考えていきたいと思います。
◯玉木雄一郎
フォーマットの見直しをやっていただいて、被害者の年齢もチェックできるようにしていただきたいと思います。
今日、大臣からは非常に前向きな答弁をいただきました。我々もしっかりと対応していきますので、政府としても是非進めていただきますことをお願い申し上げ、質問を終わります。
編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2021年3月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。