アクセシビリティ政策で米国との大差を取り戻すために

米国連邦政府には、障害者政策の中枢機関と位置付けられるアクセス委員会がある。このアクセス委員会が「自動走行車」について公開フォーラムを開催中である。

先週のフォーラムのテーマは運動障害がある乗客の車両への出入りについて。このフォーラムには運輸長官とアクセス委員会委員長が出席し、運輸省の安全政策担当次官補代理は、自動走行車を障害者等が利用できるようにすることは、雇用、教育、医療、住居、地域生活にとって極めて重要と指摘した。

当日の資料はネットに公開されている

車両への出入りを助ける傾斜板(ランプ)に関する調査結果が発表され、ドアの高さと開口部、バッテリーの位置に関する課題等について技術的な議論が行われた。車いす利用者66名が傾斜板を使って出入りする時間を測定した結果が提供されるなど、議論は人間工学に基づいたものになっている。

図:傾斜板を使って車いす利用者が出入りする自動走行小型バスのイメージ図(米国連邦政府アクセス委員会資料より)

自動走行車は今日と同様の輸送手段としてだけでなく、交通問題に新しい解を与えるものである。自動走行車は個人所有・共有・公共交通用として利用されるが、何よりも障害者や高齢者が利用可能なもの(アクセシビリティを確保したもの)でなければならない、というのが、フォーラムからのメッセージである。

次回は3月24日に、運動障害のある乗客による操縦や停車などの課題が議論される。その後、4月7日と21日には感覚障害または認知障害のある乗客に関する課題が議論されることになっている。

自動走行車といっても健常者の利用しか想定していないとしか思えない日本の研究開発と、最初から障害者等との共生を意識している米国の姿勢には大差がある。

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米国は情報通信技術製品・サービスを連邦政府が調達する際にはアクセシビリティを確保していなければならないという規制を、すでに20年に渡って続けている。一方、日本では製品・サービスのアクセシビリティを企業が自己評価し公開する仕組みが、米国の規制にならって、やっと動き出そうとしているところである。

この20年遅れが自動走行車のアクセシビリティ確保にも影響しているが、それは国際競争力に致命的な影響を与える恐れがある。そうは言っても短期間には追い付けない。まずは、製品・サービスの自己評価制度から追いかけていくしかないのかもしれない。