世界で第2の観光国スペインの一昨年の外国からの訪問者は8350万人だった。それと比較して昨年は77%少ない1900万人が訪問者数だった。この激減した理由は説明するまでもなくコロナ・パンデミックによるものである。昨年の訪問者数と同等の訪問者数となると1969年まで遡らねばならない。ESPAÑA, TURISMO NUM.VISITANTES EXT.1900 MILLONES. 21-03-2021.
また、観光収入は2019年の919億1200万ユーロ(11兆300億円)に対して昨年は197億4000万ユーロ(2兆3700億円)ということで78.5%の減少となった。
この収入の減少から例年観光業のGDPに占める割合が12%であったのが、昨年は僅か4%という貢献度で終わった。2019年まで7年連続して訪問者数そして収入が増加していたことに終止符が打たれた。
これを国別訪問者数で見ると、これまで訪問者の3本柱になっていた英国、フランス、ドイツからの訪問者の激減を見ることができる。英国は例年の訪問者数から83%減少して昨年は僅か317万人が訪問しただけに終わった。ドイツだと78%の減少で241万人の訪問者だけ。フランスは65%減少して387万人が訪問しただけに終わった。
このようなコロナ・パンデミックによる厳しい現況を前にして、昨年は62万3000人の雇用喪失につながったというのが『El País』(2月7日付)でも報じられている。
その内の40万人が宿泊業並びに飲食業の業界からの喪失だと指摘している。それをさらに分析して宿泊業界だけで見ると12万7700人の雇用が喪失したことになっているという。
この喪失が回復して雇用の創出に繋がるか否かがワクチン接種の進行度合いに依存している。現状のワクチン接種スピードだと夏場の観光客の回復も見込めない可能性も生まれて来る。そうなると、スペイン経済は最悪の事態を迎えることになるのは必至だ。少し気休めとなっているのは、英国でのワクチンの接種のスピードが速く7月には封鎖を解除するという意向も政府は持っているようだ。それは時期尚早だと思われているが、スペインにとって英国人が観光者数ではトップにある。英国から8月の訪問者が期待できることになる。
同様に問題とされているのは損害を受けている観光業界への政府からの金銭面での直接支援がいつ実現されるかということである。EUの他の加盟国と比較してスペインでの政府による観光業界へのこの直接支援がこれまで存在していない。税金の遅延を認めるとか融資枠を広げるといった金銭面での間接支援はあるが、同業界が要求し必要としているのは直接支援である。この要求の前に政府は遂に腰をあげて検討しているが、何しろ政府の対応は遅い。その間にも廃業や倒産は続出している。
2月3日付の『El País』が指摘しているのは、昨年だとスペインがコロナによる被害に対しての支援額はGDPの1.3%に対しEU加盟国の平均は4%だと報じている。例えばGDPで4位のスペインに対して3位のイタリアは5.4%となっている。
また、政府は今年の第2四半期から経済は上向きになると楽観的な予測を表明している。しかし、一旦経済が大きく後退した後では回復には2-3年が必要である。今年も経済の回復はないと見るのが自然であろう。2023年から2024年まで経済の回復は待たねばならないという見方をしている経済専門家の予測が正解だと思われる。問題はそれまで企業で持ち堪えられるだけの資金力と忍耐力と意欲があるかということである。