黒坂岳央(くろさか たけを)です。
新型コロナの感染危機が始まり、早一年が過ぎた。感染することによる健康被害に留まらず、経済危機や外交問題と様々な問題が噴出し、そのたびに我々はため息が漏れる思いをしてきた。だが、ここにきて、この感染症は一年越しに恐るべき危機を我々にもたらしたのだ。それは「視力低下」である。
この視力低下は、ウイルスに感染することによって引き起こされるものではなく、感染拡大防止策としてリモートワークやオンライン授業の結果として発生している。つまり、二次災害的被害だ。それ故に非感染者である多くの人も、この被害を受けてしまっていることを意味する。おそらくその被害者数は、実際にウイルス感染者以上だろう。
この新たな危機に対して、我々はどう対応すればよいのだろうか。
コロナ禍は世界的近視問題を加速させた
この一年間で子どもたちの視力が急速に低下している。
米国医学協会が発行する月刊オープンアクセス医学ジャーナルJAMA networkの発表した「2020 as the Year of Quarantine Myopia」によると、新型コロナの感染危機以降、世界的に近視が進んでいることが明らかになった。さらに悪いことには、学校に通う子どもたちにおいて特に深刻な状況だというのだ。
そもそも、新型コロナの襲来前から、世界的な近視が問題視されていた。WHOの発表によると、世界近視人口は2020年時点で33%、2050年には52%と半数を上回ると予測が出ている。近視の原因は言うまでもなく、スマホやPCといったデジタルデバイスだ。
総務省のデータによると、2019年度のスマートフォンの保有率は83.4%と8割を超えている。ちなみに、スマホより遥かに歴史の長いPCは69.1%だ。この数字を見れば、どれだけスマホが広く行き渡っているのかがよく分かる。
そんなスマホが登場したことで、世界的な近視傾向が問題視されていた。そこへコロナ禍のリモートワークやオンライン授業によって、スマホやPC、タブレットの利用時間が長期化し、また使用者の低年齢化が進んだ。これによって、事態はますます悪化した。新型コロナが世界的近視問題を加速させた格好だ。
オンライン授業やリモワで視力が急速に低下している
ロート製薬が2020年10月に実施した、子供を持つ母親を対象とした調査によると、約5人に1人は視力の低下を感じているという。学校に登校する代わりに、自宅でデジタルデバイスを使用する時間が長くなり、オンライン授業に参加したことと相関性があるのだろう。
学校で授業を受ける子どもたちの目は、授業中は教師や黒板といった中距離と、手元のテキストやノートなどの近距離を行き来することになる。これにより、自然に眼球運動が促進されることとなるだろう。しかし、自宅で勉強を続けることで、中距離・遠距離を見る機会が失われ、長期的に手元の近距離を見続けることになる。結果的に視力低下を引き起こしていると推測される。
また、この状況は子どもたちに留まらない。大人も通勤がなくなり、オフィス内外での軽い移動なども一切なくなってしまった。よほど意識的に眼球をいたわる心がけがなければ、自然に一日の大半を近距離を凝視し続けることになるだろう。
我々はコロナが引き起こしたリモワやオンライン授業によって近視生活を余儀なくされ、危機的な眼球疲労を招いている状況に置かれているのだ。
意識的に目を休ませる
防止策は唯一つ、それは意識的に中距離や遠距離を見る習慣を取り入れることだろう。
コロナ禍以前から、近視危機については警鐘を鳴らされていた。そのため、コロナ前のライフスタイルに戻っても、ただちに近視問題が完全解消されるわけではない。だが、少なくとも悪化した事態の改善はできるだろう。個々人が取り組める策としては、シンプルに手元を見続ける習慣から距離を置くことだ。スマホを使う代わりに、モニターから距離を置いてPCを使うなどがあげられる。スマホは油断すると、30cm以内にモニターと顔が近づいてしまう。そのため、意識的に椅子を遠くにおいてPCを使うことによって、スマホを使うよりは状況が改善できるのではないだろうか。
また、意識的に目を休めるというのも良い方法だろう。目を閉じ、ホットアイマスクを使えば眼球疲労の回復効果が期待できそうだ。
コロナに感染しなくても、二次災害的に目をやられてしまってはいけない。コロナ襲来前から、視力低下は問題視されていたが、ここへ来て真剣に近視問題に向き合う時が来ている。